日本工業大学 NIPPON INSTITUTE OF TECHNOLOGY

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研究テーマの内容

例えば、電気自動車の車載用途や定置型蓄電池として、大型リチウム電池の利用が期待されている。しかしながら、現在のリチウム電池は有機電解液を使用しているため、発火の危険性を秘めており、安全性の点から大型化に問題がある。それを解決できるのが全固体電池である。全固体電池は、正極(プラス)、電解質、負極(マイナス)のすべての部材が不燃性の固体で構成されているため、高い安全性に加えて、高いエネルギー密度(容量)と出力(パワー)を兼ね備えた次世代の高性能蓄電池として期待されている。
本研究では、この全固体電池の開発と応用を目的として、(a)低抵抗固体材料界面形成(Science)、(b)機械学習を利用した新規材料開発(Mathematics)、(c)プロセス技術検討と全固体電池の性能評価(Engineering)の3つの項目について研究を進める。いわば、これまで「ローテク」とされてきた電池開発の分野に、「Science」と「Mathematics」を取り入れることによって新たなイノベーションをもたらす。これは、前述した本学の現状と、今後目指す将来ブランドと合致する。

(a)低抵抗固体材料界面形成(Science)
全固体電池と液系電池の大きな違いは、リチウムイオンが固体電解質と正極の間をまたいで移動することであり、固体電解質と正極の界面における大きな界面抵抗が実用化に向けた課題となっている。高い界面抵抗では、高速な充放電が困難であり、全固体電池の実用化に向けて、界面抵抗発生メカニズム解明と抵抗低減が必要不可欠となっている。正極ならびに固体電解質の薄膜を用いて理想的な界面を形成することにより、上記課題の解決に取り組む。(平成29~30年度)

(b)機械学習を利用した新規材料開発(Mathematics)
大きな出力を生むためには、高い電圧と大きな電流が必要であり、そのための材料開発が精力的に行われている。その世界的な競争を勝ち抜くため、ベイズ推定などの機械学習を取り入れた物質合成を行う。物質合成の際には、合成条件のマトリックスを如何に早く埋め、最適な条件を如何に早く見つけ出すかが鍵となる。機械学習、さらにはインフォマティクスとの連携により、例えば、これまで1年間を要していた合成条件の最適化を1か月で実現する。これにより、新規材料開発、特に、大気安定で高いイオン伝導性を示す固体電解質の開発を進める。(平成29~30年度)

(c)プロセス技術検討と全固体電池の性能評価(Engineering)
(a)および(b)で得られた新規材料ならびにそれら低抵抗固体材料界面の形成指針を基に、全固体電池を実用化するためのプロセス技術に関する検討を行う。そして、プロトタイプの全固体電池を作製し、液系電池との性能比較を行う。すなわち、電解質を固体に変えることにより、蓄電池としてどのような優位性が得られるのかを明らかにする。これにより、全固体電池が、高容量かつ高速充放電が可能な高性能蓄電池であることを示すとともに、高い安全性を示すことを実証する。(平成31年度)

期待される研究成果

本研究により、固体電解質および電極の新規材料開発、ならびに電極/電解質の低抵抗界面を形成するための要素技術を確立し、全固体電池を実現するための設計および製造指針を示す。薄膜を利用した理想的な電解質/電極の低抵抗界面を製作し、「どこまで電池性能を向上できるのか?」という目標を提示できれば、全固体電池の実用化が飛躍的に前進することになる。
本研究の遂行により、電池業界における研究開発の進め方を大きく転換することができる。また、全固体電池は、液漏れや爆発などの危険がなく、安全性が高いため、実用化されれば液体電解質を用いた現行の電池製品に代わって瞬く間に普及することが予想される。
本研究の固体電解質を用いた高性能全固体電池の実証により、高速充放電、長距離走行を可能にする電気自動車の実現が期待される。

研究成果が社会に貢献・寄与する範囲

2016年11月、日本は2030年までに温室効果ガスを26%削減することを宣言した。そして、同目標を達成するために、次世代蓄電池のための革新的蓄電池技術開発を強化することを表明した。日本のCO2排出量の内訳では、例えば、自動車の排出量は全体のたかだか18%であるが、今後より強化すべき分野と考えられている。すなわち、電気自動車などの次世代自動車の普及台数を増やすことにより、CO2排出量削減に大きく寄与することが期待されている。
また、自然エネルギーを分散(事業者・個人)して蓄電することで省エネルギーを加速し、温室効果ガスの大幅削減を目指す社会の構築に大きく貢献することが期待される。