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ブランディング事業事業目的

本事業は、将来の人類社会を支える重要な社会基盤の要素である次世代蓄電池を開発し、その応用技術を研究していくことを目的とする。
すなわち、蓄電池技術は、今後の分散型社会の発展において、輸送機器、家庭や事業所、情報機器等の動力源として欠かせない基盤技術である。開発すべき技術の要点は、動力源の高出力化、長寿命化、低環境負荷化、安全性向上である。さらに、この技術は、社会基盤技術の整備のみならず、省エネルギーや地球環境維持にも派生する全世界的な重要技術でもある。
現在の蓄電池は液系リチウム電池が主流であるが、高出力化や安全性確保などの観点で課題が残っている。
本研究では、次世代電池として、現在有力視されている全固体電池の開発をテーマとして据える。全固体電池は、前述の液系リチウム電池の問題点を根本的に解決できる素質を備えていると考えられている。本研究により技術的課題が解決され、その実用化が可能となれば、前述の社会基盤整備と地球環境保護に大きく寄与することになる。
その技術的課題に対して、本学は、これまで材料技術、薄膜成膜技術および金属塑性加工技術などの全固体電池開発に関連する基盤技術を培ってきた。その基盤技術を活用し、さらに本学の将来ビジョンとして現在進めている、応用化学分野などにおける先進的な科学技術と融合させることにより、事業の目的を達成する。
それぞれの観点からのさらに詳しい分析結果は以下の通りである。

外部環境・社会情勢等の現状分析

社会基盤整備の進む方向として、動力源を送電等の社会インフラに依存するだけではなく、太陽光などのクリーンエネルギーを個別に蓄電することで、CO2の削減や省エネルギー化を推進する上で蓄電池の利用は重要なインフラ整備となる。今後は、住宅や事業所、輸送機器、スマートグリット端末(情報機器など)などの装置は多方面で分散化するものと予想され、分散化した装置の動力源として全固体電池は重要な要素となる。
国の蓄電池戦略は、資源エネルギー政策の重要戦略の一つであり、「2020年までに世界の50%のシェアを得ること」、「蓄電池関連の研究開発を推進」することなどの政策が盛り込まれている。

技術的課題の分析

蓄電池技術は、現在、NAS電池や鉛電池などの種類があるが、高出力化(容量とパワー)では、リチウム電池が優位である。しかしながら、現状のリチウム電池は液体を使用するため、さらなる高出力化や液体封入に係る安全性で課題がある。最近でもスマートフォンや航空機などの発火事故が発生しており、安全な電池技術の開発が急務となっていることは周知である。液系電池では、液体封入にかかるコストと技術的課題レベルが高く、家庭用途や輸送機器用途向けの大型化ができず、かつ常に発火や爆発の危険性を抱えている。
それに対して、全固体電池は電解質が不燃性の固体であるため、液系電池の問題点を根本的に解決する。しかしながら、同電池の技術的課題はリチウムイオンを低抵抗で移動させる固体電解質を開発できるか否かにかかっている。本研究の主たるテーマは、低抵抗の固体電解質の開発であり、その手法として、本研究では、真空プロセスによる薄膜成形技術を応用することを特徴とする。

本学の将来ビジョンとの整合

本事業は、社会インフラとして、およびエネルギー問題を解決する将来技術として重要な研究テーマに関するものである。また、規模的にも本学規模の大学が取り組むのに最もふさわしい。さらに本学の「産学協同理念と社会の発展への寄与」を盛り込んだ建学の精神とも一致し、これまでの本学の強みである材料技術、薄膜合成技術、および生産加工技術を基盤として、これに本学が将来ビジョンの一つとして具体的に取り組もうとしている応用化学分野や機械学習などの先進的工学分野を取り入れたものである。すなわち、全個体電池の開発は、本学の基盤技術と新たな科学技術分野とを融合させた総合技術であり、本学の将来ビジョンと合致する。

大学の将来ビジョン

本学校法人の創立は、明治40年(1907年)に遡る。前身は工業高等学校であり、その目的は、技術者と生産現場の工員をつなぐ中堅技術者の養成にあった。
現在の日本工業大学は、昭和42年(1967年)に、工業高校卒業生を受入れる大学として設立された。工業高校卒業生に対して、大学において高度な技術を学ぶ機会を提供してきた。研究活動においても、「産学協同理念と社会の発展への寄与」を盛り込んだ建学の精神に基づき、実用的研究を展開し、これまでに材料技術や生産加工技術の方面で多くの実績がある。具体例として、気体からの人工ダイヤモンドの合成に世界ではじめて成功し炭素系硬質膜の合成と応用に関する研究拠点となり、金属プレス加工分野における研究拠点となるなどの実績を残してきた。
大学の将来ビジョンは、前述の本学の持つ基盤技術力を堅持すること、そして人間、社会、地球環境の変化に合わせて、その基盤技術を改良、発展させていくこととした。本学の持つ精神、規模、社会的地位からするに、これまでの人的(研究者)、物的(設備)資源を最大限に生かし、それを磨いていくこと、そこに新たな息吹を吹かせることとした。小粒だが光る技術を持つ大学になることを目指す。