福祉住環境計画研究室

野口 祐子 教授

Laboratory

研究室紹介

障害のある人の「障害」は、環境によって重くも軽くもなります。例えば、足に障害のある人が階段を上れず、目的の場所に行けない場合、かつては足に障害があることが原因と考えましたが、最近は、段差がある、エレベーターがない、といった環境に原因があるという考え方をします。身体の障害に限らず、認知症の人、知的障害、精神障害のある人の「障害」も同様です。問題はその人が持っているのではなく、環境側、社会の側にあるのです。

そのような視点に立って、障害のある人が生活のしづらさを感じることなく、障害のある人もない人も当たり前に暮らせる環境のあり方について研究しています。障害に配慮したとしてもさりげなくデザインされ、障害の有無に関わらず誰もが尊いひとりの人として尊重される、そんな社会を実現するために活動していきたいと思っています。

主な研究紹介

長期にわたり身体状況が変化する難病患者の住環境整備に関する研究

難病は、急激に機能障害が発生する脊髄損傷や脳血管障害の後遺症とは異なり、患者さんの症状やその経過、また、生活の実態が把握しづらい状況で、住環境整備に関する先行研究は少なく、経年変化を見越した提案や考え方などの知見は十分ではありません。そのため、その住環境整備は高齢者や障害者の標準的な手法でおこなわれ、整備の量・質ともに、個々の難病患者さんの特性に即して実施されてきたとは言いがたい状況です。

そこで、難病、特に住環境整備の必要性が高く、比較的患者数が多い筋萎縮性側索硬化症、脊髄小脳変性症、パーキンソン病、関節リウマチの患者さんを対象に、適切な整備方法を検討するために必要な症状の変化と住環境の課題を明らかにすることを目的に調査をおこないました。

各患者会から調査協力者として紹介を受けた数十名の方の自宅を訪問し、特に、長期にわたる身体状況の変化と住環境整備のプロセスを重視して調査を実施しました。

これらの研究結果を、患者さんの住環境整備に活用していただくため、患者さんや家族、医療、福祉、建築等の関係者にわかりやすいパンフレットを作成しました。

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知的・発達障害児の住環境整備に関する研究

近年、バリアフリーやユニバーサルデザインといった言葉が一般化し、高齢者や身体障害者の住まいの安全性や使い勝手は飛躍的に向上しました。一方、知的・発達障害のある子どもの住まいについては、調査や研究が少なく、その実態さえよくわかっていないのが実情です。

「玄関から急に飛び出して行方不明になった」、「コンロの火を間近で眺めていて、まぶたをヤケドした」、「興奮してテレビを叩いて、液晶画面が割れた」、「飛び跳ねる音がうるさくて階下の人からクレームを受けた」等々、知的・発達障害のある子どもの行動と住まいの環境が合っていないと、子どもの命に関わる大きな事故につながったり、親のストレスが増大するなど深刻な問題になりかねません。そこで、横浜市総合リハビリテーションセンターが住宅相談に関わってきた事例を紹介しながら、知的・発達障害のある子どもの住まいを考えることができるパンフレットを作成し、関係機関に配布するなど知的・発達障害のあるこどもを持つ家庭に向けて情報を発信しています。

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東日本大震災における応急仮設住宅に暮らす障害者の入浴に関する研究、熊本地震の被災地における仮設住宅での高齢者、障害者の暮らしに関する研究

災害時に建設される応急仮設住宅(以下、「仮設住宅」)は、建設費用や工期重視のために、浴室は狭く、出入口に段差ができています。そのため、障害のある人が入浴できないという問題が生じました。

そこで、2012年、仮設住宅に入居する障害のある人18名の入浴の実態と仮設住宅の浴室環境について調査をおこない、特に、脊髄損傷、脳梗塞、関節リウマチなどで下肢に重度の障害がある人は浴室に入ることが難しい状況であることを把握しました。

一方、「被災地障がい者センターかまいし」は、仮設住宅で入浴できない障害のある人を送迎して入浴支援ができる浴室を設置していましたが、介助スタッフが2~3人揃わなければ入浴できないことを知り、リフトメーカーや販売業者に呼びかけて、無償でリフトを設置しました。それによって介助スタッフ1名体制で入浴が可能になりました。

なお、仮設住宅の調査は熊本地震の被災地でも実施しています。また、東日本大震災被災地における仮設住宅で調査に協力していただいた高齢者、障害のある方については、復興公営住宅に転居したあとも継続的に訪問調査を行っています。

  • 仮設住宅の浴室前の段差

  • 仮設住宅の浴槽の高さ

  • 被災地障がい者センターかまいしにリフト設置