木質構造研究室

那須 秀行 教授

Laboratory

研究室紹介

地球温暖化の問題を背景とし、先進国を中心に木造建築に大きな期待が注がれています。木は二酸化炭素を吸収して成長し木材として固形化しているのです。木材を建築物として大量に長い間利用しつつまた植林していくことは、二酸化炭素を大気中に放出するのとは全く逆の環境貢献ができるのです。しかも、自然素材である木材は利用する人にとても心地よい空間をもたらしてもくれます。

当研究室では、木造による中高層建築やスケルトン躯体の研究開発を行っています。また、制振技術を活用し木造住宅の耐力劣化を抑制する研究も行っています。更に、接合部において木材の繊維方向を最適に組み合わせることで剛性や靭性等の挙動を制御できないか、木材の割裂を抑制できないかについても研究を行っています。新しい木造・木質構造の可能性を広げるべく積極的に研究開発活動を進めています。

実業界との共同研究の他、国内の研究機関や他大学、スウェーデンとの共同研究を行いながら、実験を主軸に実践的な研究をしています。研究成果は国内外での学会発表の他、専門誌や業界誌等への掲載、各種学術委員会の委員として情報発信しています。

主な研究紹介

制振耐力壁・木造耐力壁の劣化抑制に関する研究開発

木造住宅に大きなコストをかけず施工性良く制振効果を発揮できる構法を開発しています。粘性材料や摩擦材料を耐力面材とフレームの間に挟み込むことによって、頻発する中小地震や日々の交通振動等に起因する耐力壁の経年劣化を抑制し、かつ極大地震でも損傷を大幅に低減させることで地震後の補修費用を削減させることが目的です。開発した各仕様の耐力壁を製作し、まず振動台や起振機でダメージを与えて応答を比較検証します。更にそれらの耐力壁そのものに静加力実験を行うことで残存耐力を精密に検証しています。

なお当研究テーマは、科研費 基盤研究(C)17K06653「塗布状制振素材及びテープ状制振素材による木造制振耐力壁の開発と実棟3次元挙動解析(研究代表者 那須秀行)」、京都大学防災研究所 一般共同研究26G-10「制振素材による木造住宅の劣化抑制に関する研究(研究代表 那須)」、京都大学生存圏研究所 木質材料実験棟共同利用研究26WM-15「制振素材による木造住宅の耐力劣化抑制に関する研究(研究代表 那須)、京都大学 生存圏研究所 木質材料実験棟共同利用研究27WM-18「制振素材による木造住宅の耐力劣化抑制に関する研究(研究代表 那須)、京都大学生存圏研究所 木質材料実験棟共同利用研究28WM-10「テープ状制振素材又は塗布状制振素材による木造制振耐力壁の効果に関する研究(研究代表 那須)、京都大学生存圏研究所 木質材料実験棟共同利用研究29WM-07「テープ状制振素材又は塗布状制振素材による木造制振耐力壁の効果に関する研究(研究代表 那須)の助成を受けています。

CLT中高層木造建築・木材の利用促進に資する研究開発

欧州では中高層木造建築(9階建のオフィスビルや集合住宅等)が既に建設されていますが、世界有数の地震国である日本もその実現を目指しています。それらを可能とする新しい木質構造材CLT(クロスラミネーテッドティンバー)の力学特性を把握し設計に活用できるよう、ラミナの組合せ方をパラメータとしてCLT梁の曲げ・せん断実験を行っています。また、床や壁の接合部において、木材繊維方向の組合せにより接合部剛性・強度・靭性をコントロールすべく引張実験やせん断実験も行っています。更に、中高層化で生じる極大鉛直応力下での壁脚部の局部的な座屈や潰れを抑制すべく、中径のスクリューボルトで補強したCLTの木材繊維方向やビス形状、ピッチ等をパラメータとした圧縮実験も行っています。これらCLT試験体の製作についても本学の施設を活用し自ら行っています。

なお当研究テーマは、科研費 基盤研究(C) 24560696「木材繊維方向の組合せにより接合部剛性・強度および靭性を確保し制御する研究(研究代表者 那須秀行)」の助成を受けています。

木造ラーメン構造・自由度の高い木造建築の研究開発

よりプラン自由度の高い木造建築として、大断面集成材を活用したラーメン構造(スケルトン躯体)の研究開発を行っています。これまでも住宅用の高強度な接合部開発を進めてきましたが、更にハイスペックで大型の事務所ビルにも適用できる構造開発を進めています。大断面木材の最大強度に近い接合部とする場合、破壊に達するまでの十分な靭性の確保がキーポイントです。そのアイデアを出して接合部設計して試作をし、そして自ら実験をして改良を重ねています。接合部単体でも400kNの引張強度を超える高強度接合部の単体実験や、壁柱として組立てた状態でのフレーム実験などを学内実験施設で進めています。

木造住宅の損傷判定・極大地震後の緊急対応に関する研究開発

住宅供給者の技術力と不断の努力により、大地震に対しても十分な耐震性能を有する住宅が普及しています。しかし居住者にとっては、大きな損傷が見られなかったとしても、生活の場である住宅の損傷度合に対し不安を抱く場合もあります。地震被害を受けた住宅の損傷度合は専門家が診断を行いますが、発生直後は専門家への問合せが集中し診断までに時間を要してしまいます。災害による居住者の不安を軽減すべく、新築既存に関わらず専門家でなくとも居住者自らが、住宅の損傷度合を応急判断できる診断装置の開発を進めています。