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日本工業大学について学長挨拶

デジタル社会を見据えた大学の教育 ~継承と進化~

学長 竹内 貞雄

 10月1日に学長に就任いたしました。本学が1967年に設立されて56年目、11代目の学長となります。私は、付属高校(当時は東京工業高等学校)から日本工業大学に進学して1978年に卒業しました。本学出身として初めての学長となります。卒業生の代表という事、少子化による受験生確保が難しくなる状況の中、責任の重さに身の引き締まる思いです。

 さて、大学を取り巻く状況は大きく変わりつつあります。就職について、当面は現行の一括採用型が継続されますが、入社した会社に定年まで勤務するという考え方の一方で、個人の裁量でスキルアップを果たして転職していく、欧米型のジョブ型雇用が広がると予測されます。そのためには自己啓発への意識、新しいことに積極的に取り組む資質が不可欠です。このような意識を醸成するために、学生にどのような教育を行うのか大きな課題を突きつけられています。

 また、大学生の教育を考える上で衝撃的な技術革新がありました。チャットGPTに代表される生成AIの急速な普及です。文書作成、表計算ソフトに搭載され数年後には学生でも専門家なみの文章を書いてくるでしょう。ただしAIの答えにある情報は世界で共有されており、 新規性はないはずです。大学の使命は、AIの答えの元になる創造的な研究成果、創意工夫を提供できる人材を育成することであり、言い換えれば「言語化できない暗黙知」を身につけたエンジニアになれるであろう人材を社会に送り出すことです。工学分野においては、実物に触り、設計し製作する過程を経て身につけることです。

 本学は開学以来、「具象から抽象へ」を掲げ、現物に触れることを重視してきました。この精神を再編した「実工学の学び」を軸として、実験・実習、製図といった自ら手を動かす体験学習と理論を並行して学ぶカリキュラムを展開しています。開学以来50有余年に蓄積した研究設備と教育のノウハウにより、本学で学んだ学生は、工学の専門知識をベースにした暗黙知の引き出しを数多く備えて卒業することができます。「生涯学び続ける事ができる学生を育成」「学生を成長させる力で選ばれる大学へ」これらはここ数年の本学のキャッチフレーズです。絶え間なく世界中の情報を集め続けるAIに太刀打ちできるのは数多くの引き出しを埋める優れた知見と発想力であり、先人達が築いた教育体系は継承に値するものと考えています。

 一方、少子高齢化と、世界規模の政治・経済、気候に関する不確定要因は如何ともしがたいものがあります。「生き残るのは強者ではない、変化に柔軟に対応できる者だ」といわれています。本学としては、受験生のニーズに沿う入試、企業のニーズに対応する学生を育てる柔軟な教育体系への進化が不可欠です。健全な進化はトップダウンではなく、意見や議論をする前提としての情報開示、忌憚のない意見を討議できる場、責任を持って実行するための権限の移譲が必要と考えています。そのための舵取りに全力で取り組みます。

 これからの日本工業大学の発展には今まで以上の教職員の協力が欠かせません。本学は他大に先駆け「教職協働」に取り組み、学生の入学から卒業までを学修支援センター等の職員と教員が連携して見守る体制を構築してきました。この取組は外部評価で高く評価されるとともに、「就職支援に熱心に取り組む大学」として常に上位にランクされております。

 日本工業大学は「学生を成長させる力で、選ばれる大学へ」に向けてこれからも進化を続けます。