日本工業大学 NIPPON INSTITUTE OF TECHNOLOGY

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教育力・研究力

教員の研究活動

基幹工学部応用化学科大澤正久教授らの研究成果がDalton Transactionsに掲載されました。

 応用化学科大澤正久教授らがほぼ100%の量子効率を示す遅延蛍光性金材料の合成に成功し、材料の構造と光物性の相関を明らかにしました。本成果は英国王立化学会の無機化学系専門誌の中で最も権威があるDalton Transactionsの裏表紙に採択されました。昨年度に続いての掲載です。
http://pubs.rsc.org/en/Content/ArticleLanding/2018/DT/C8DT01097H#!divAbstract

 

我々の研究室では有機ELのための高効率ハイブリッド発光材料1)の合成を行っています。与えた電気エネルギーを効率よく光エネルギーへ変換することができれば、省エネルギー化が可能となります。すなわち、スマホやPCのバッテリーが長持ちするようになります。
 最近、高効率発光色の青色化と安定性の両立が期待できる熱活性型遅延蛍光(以下遅延蛍光)性材料の開発が活発に行われています(図1 中)。我々はd10金属2)に注目し、銅および銀のハイブリッド遅延蛍光性材料を開発してきました。今回、室温でほぼ100%の量子効率の黄緑発光(平面三配位構造)および青色発光(四面体構造)を示す金の発光材料の合成に成功しました(図2)。これらの光物性の測定および理論計算から、材料の室温発光は遅延蛍光とリン光が混在した発光であることが判明しました(図1 右)。これは、金原子の持つ重原子効果に負うところが大きいと考えられます。また、リン光の混在する割合は配位構造によっても変化することを明らかにしました。この事実は、重原子効果の大きさが材料の構造によって変化することを示唆しています。
 今回論文中で我々が提唱した発光メカニズムをもとに、多くの研究者がより優れた新しい発光材料の開発を進めていくことを期待します。

本成果の一部は、平成28年度卒業生の長倉昂生さん、平成29年度卒業生の藍野真旭さんが卒業研究として行ったものです。ここに謝意を示します。また、X線構造解析と温度可変NMR測定でお世話になりました東京工業大学化学生命科学研究所・田中裕也博士に感謝申し上げます。最後に、裏表紙(art)の製作にご協力いただいた入試室・小池奈津子さんにお礼申し上げます。

1) ハイブリッド材料:金属と有機物(有機配位子)を組み合わせた材料
2) d10金属:d軌道が10個の電子で満たさされている金属、例えば金、銀、銅

(左図) 励起一重項状態を重原子効果によって励起三重項状態に集めることが可能なため量子効率100%のリン光が期待できる。
(中図) 励起一重項状態と励起三重項状態のエネルギー差が小さいため室温で両者が熱平衡状態となり、結果として全て一重項から遅延蛍光として放出される。量子効率100%が期待できる。
(右図) 今回合成した金材料の発光は遅延蛍光とリン光が混在しており、かつ量子効率はほぼ100%であった。

図1 それぞれの発光プロセス

図2 合成した発光材料

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