NITトレインラボは、本学教員の研究内容を紹介する場。
東武線全線の「ドア横ポスター」に掲出した内容は、この特設サイトにて動画や写真で詳しくご紹介いたします。
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人間の世界を本当に理解した
自動運転車は実現できる?

基幹工学部 電気電子通信工学科
計算知能システム研究室
生駒哲一 教授

▶概要
 運転者の観察行動である顔の向き(頭部の姿勢)と、運転操作を行う両手と足の挙動を、コンピュータシステムがリアルタイムに把握し、運転者の身体挙動から推測される運転意図や心理状態を、運転者の状況を考慮した高度な安全運転支援や、自動運転から手動運転への切り替え時の支援などに活用します。
 運転者に向けて、カメラなどのセンサを複数設置し、元の情報となるセンサ信号を取得します。①運転者の顔を撮影するカメラを、ステアリングの奥に設置して、運転者の顔の正面画像を取得します。②シートベルトの巻き取り部の上に、ステアリングを見下ろす画角でカメラを設置して、ステアリングを操作する両手の挙動を撮影した画像を取得します。③足の挙動については、暗部であることからカメラは用いずに、マイクロ波の反射波に対するドップラ効果で得られる低周波信号(100Hz程度)を取得します。足の動く早さが周波数に反映され、足のセンサへの近さが信号の強度に反映されます。 複数のセンサから得られた画像や信号から、有益な情報を抽出します。①運転者の顔を撮影した動画像から、運転者の顔の向き(頭部の3次元位置・姿勢)とその時間変化を得ます。②ステアリングを操作する両手の挙動を撮影した動画像から、ステアリングを握る位置、腕の伸びる方向と、その時間変化を得ます。③足の動きや位置が反映されたドップラ信号の周波数と振幅に着目して、ペダルを操作していない状態での足の動きを推定します。 センサ信号から抽出された運転者の身体挙動の情報に基づき、運転意図や心理状態の推測を行うことで、運転者の状況を考慮した安全運転支援や、自動運転から手動運転への切り替え時の支援など、アイデア次第でさまざまなアプリケーションが可能となります。
 運転者挙動のリアルタイムでの把握は、日本工業大学18号館103室(展示ホール)にて常時稼動できる状態で研究を進めており、オープンキャンパスなどで訪問者が体験できるデモンストレーションとしても公開しています。
▶原理
 直接には観測できない(隠れた)本質的な要因を「状態」といい、これが時々刻々と変化している状況を考えます。運転者の挙動把握では、顔の姿勢(位置・向き)、両手のステアリングを握る位置と腕の伸びる方向、ペダルを操作していない右足の位置が、「状態」となります。カメラで撮影された顔画像や両手挙動の画像、足挙動のドップラ信号などのセンサ信号は、「状態」から派生した部分的な情報であり、これらを「観測」といいます。
 原因である「状態」と、派生物である「観測」との間には関係性があり、それを「観測モデル」と呼ばれる数式(確率分布)で表します。一方、「状態」の時間変化は、物理的な法則に従い、更に人の挙動では自由意志が加わります。これを「時間推移モデル(システムモデル)」と呼ばれる数式(確率分布)で表します。ここで確率が使われる理由は、観測情報が得られる過程での不確かさ(観測誤差、誤った検出など)や、人の自由意志を含む想定外の要因など、確かな数式で予め記述することのできない要素を、ゆるやかに表すためです。
 「観測モデル」と「時間推移モデル」に、初期時刻での状態の確率分布である「初期状態モデル」を加えたものを、「状態空間モデル」と呼びます。このモデルに基づき、最適な状態を求める方法が「最適状態推定」です。「最適状態推定」は、観測情報のノイズ除去を行うフィルタが発展したものであり、「最適フィルタ」とも呼ばれています。その原理は、統計学の中でも有用性が広く認められている「ベイズ推定」に基づきます。これは、聖職者であったトーマス・ベイズが導き出した「ベイズの定理」の数式に基づく推論です。状態推定の解は、単一の確定した数値ではなく、確率分布となります。
 最適フィルタの中でも、柔軟性が高く、広いクラスの状態空間モデルに適用可能なものが「パーティクルフィルタ」です。その原理は、状態推定の解を表す確率分布を、その確率分布に従う多数の候補数値で近似的に表します。これは「モンテカルロ法」による近似です。『モンテカルロ』とは、カジノで有名な地中海の地名ですが、「モンテカルロ法」はその地名になぞらえた名前で、乱数(さいころ投げの目ような数値)を用いた積分値計算の方法として有名です。パーティクルフィルタには様々な種類があり、日本で発明され、「モンテカルロフィルタ」という固有名で知られています。より詳しい内容は、参考文献[5]を参照して下さい。
▶発展
 運転者の挙動を把握するだけでなく、運転意図や運転者の心理の推測にもつながる研究で、今後の更なる発展が期待されます。コンピュータで把握した運転者の状態を活用した、より具体的な応用としては、例えば下記のようなものが考えられます。これらの他にも、アイデア次第でさまざまな応用があり得ると思います。

・運転者の異常(注意散漫、眠気、急な体調不良など)を検知して、注意喚起や警報を出し、非常時には自動停止などの安全措置をとる。
・運転中の非安全行動、例えばスマートフォンの操作や無理な片手運転、危険なよそ見などを検知し、安全運転を適切に行うよう支援する。
・運転意図を把握し、周囲の交通等に対しそれを発信する(車車間通信や路車間通信による)ことで、運転意図の情報を皆で共有して、交通シーン全体としての安全性を高める。
・自車に搭載した外部向けのセンサ情報と照合することで、周囲の交通にマッチした運転操作や観察行動が行われていることを確認し、過不足があれば支援する。例えば、顔姿勢の動作履歴から、観察されていない方向がわかり、そこにもし危険があれば運転者に知らせる。

 設置するセンサを増やすことも容易にできます。例えば心拍数などの生体信号をシートに設置したセンサから取得することや、マイクロフォンを複数設置して自動車内外の音響情報を取得することも考えられます。「最適状態推定」は、複数のセンサ情報を融合することを得意としています。様々なセンサからの情報を複合的に活用し、運転者や搭乗者、更には周囲の交通や人々の状況をも把握して、思いやりにあふれた支援が可能になるかも知れません。
▶自動運転との関連
 「2020年ころまでに完全自動運転が実用化されるから、運転者は要らなくなり、運転者の状況を把握する必要はないのでは?」との疑問が生じることと思います。完全な自動運転が本当に完成するのは、もっと先のことだと予想しますし、仮に実現したとしても、そこには人が乗っているはずです。乗っている人を意識したサービスが必要です。限定的な状況(高速道路など)での自動運転となれば、手動運転への円滑な切り替えも必要になります。
 自動運転自体においても、パーティクルフィルタをはじめとする最適状態推定の方法論は、有効に活用することができます。自動運転にせよ、人の状態推定にせよ、状況をしっかりと把握した上で、的確な判断を下せる自動化システムの構築が重要となってきます。周囲の交通等を考えると、そこには歩行者がいて、自転車なども走っています。自動車や交通に限らず、わたしたちの生活を豊かにするために、人の動く状況をコンピュータシステムが自動的に把握することは、重要な研究課題です。
▶人工知能との関連
 最近ブームとなっている「人工知能」が、何でもやってくれて、我々の仕事を代行してくれる世の中になるとの予想もありますが、本当でしょうか?人工知能が人を超える「シンギュラリティ」が近い将来に訪れるという予言もありますね。しかし今ブームの人工知能は、「深層学習」という複雑な脳ネットワーク計算法の性能向上と、「機械学習」という数学的な学習理論とが融合して、さまざまな分類問題をこれまでよりも高い精度で解いてくれるものあって、人の高度な認識能力や判断能力には、まだ遠く及ばないのが実情のようです。
パーティクルフィルタをはじめとする最適状態推定の問題設定は、確率論と統計学に基づきエレガントに定式化された、確かなものです。これを土台として、人工知能(深層学習や機械学習)の要素を盛りつけることができます。人工知能の持つ高性能な認識能力と、最適状態推定の持つ確かな状況把握の原理とを融合することで、更に高度で確かな状態推定・状況把握が可能となるでしょう。この方向性にて、我々の実世界のことを真に理解できる自動化システムの原理解明に一歩でも近づくことを期待し、それを様々なデモシステムとして具現化しつつ研究を進めています。
▶この研究を通して学べること
リアルタイムで動作するデモシステムの構築を通して、そこで使われている最先端の推定手法はもちろんですが、実装のためのさまざまな要素技術を学び、身に付けることができます。最適状態推定のパーティクルフィルタ、人工知能、深層学習や機械学習による認識技術、プログラミング、電子回路、ネットワーク通信、画像処理、信号処理、システム化技術などです。もちろん難しい面もありますが、その分、やりがいもあり、学ぶことの多い研究環境を提供しています。
▶参考文献
[1] 生駒哲一, "マイクロ波ドップラ信号からの運転者の足挙動の把握に向けた信号取得システムの構築", 自動車技術会2018年秋季大会学術講演会、to appear, 2018.
[2] 生駒哲一, "非安全行動の検知に向けた二カメラ動画像からの運転者の頭部姿勢および両手挙動の同時推定について"、第34回ファジィシステムシンポジウム, pp.801-804, 2018.
[3] 生駒哲一, "顔正面と両手挙動の2動画像からの運転者上半身挙動の把握"、第13回コンピューテーショナル・インテリジェンス研究会、pp.80-84, 2018.
[4] 生駒哲一、"パーティクルフィルタによる運転者顔姿勢の実時間推定における首傾げの扱いについて"、第32回信号処理シンポジウム、pp.506-511, 2017.
[5] 生駒哲一、"パーティクルフィルタ~汎用的な非ガウスフィルタ"、計測と制御、Vol.56, No.9, pp.644-649, 2017.
[6] 生駒哲一, "パーティクルフィルタと人工知能の融合", 計測自動制御学会システム・情報部門学術講演会2015 (SSI2015)、pp.1324-1329, 2015.
[7] 生駒哲一, "パーティクルフィルタによる運転者の顔姿勢および両手挙動の実時間推定", 自動車技術会論文集、Vol.44, No.3, pp.919-924, 2013.
自動運転解説動画
「アクティブ制振技術」で
大空間構造物のデザインはもっと自由になる!

建築学部 建築学科 建築コース
シェル・空間構造研究室
箕輪健一 助教

私が研究しているのは、室内に柱のない大きな空間をもつ建築構造物です。
この「大空間構造物」には、小中学校の体育館からドーム球場まで、様々なバリエーションがあります。
このような建物において、私たちは何をすることが出来るでしょうか。
例えば、スポーツ、コンサート、展示会など、楽しいことがたくさん考えられると思います。

一方、これらの建物は、台風や地震などの災害時に避難所としても用いられるため、安全性がとくに必要とされる大切な建物でもあります。
ここで、建物の地震に対する安全対策に目を向けると、建物に地震の揺れを伝わらないようにする「免震」や建物の揺れを吸収する装置を設置する「制振」という方法が提案されています。

本研究では、この「制振」に分類される一手法である「アクティブ制振」を「大空間構造物」に適用することを検討しました。
この「アクティブ制振」とは、人体でいうところの、目にあたる「センサ」で感じて、脳にあたる「コンピュータ」で判断して、筋肉にあたる「アクチュエータ」を動かして、積極的に建物の揺れを抑えようとする方法です。

さて、ひとまず研究の成果(動画)をご覧下さい。
動画では、体育館等の屋根などを構成するのに良く用いられる円筒型のラチス(網目状の)シェルの振動実験の様子をご覧頂けます。
それぞれアクティブ制振を行っていない場合の振動実験の様子(上)とアクティブ制振を行っている場合の振動実験の様子(下)です。
動画では少しわかりにくいかもしれませんが、「アクチュエータ」としてボイスコイルモータと呼ばれる装置が2箇所に設置されています。
このボイスコイルモータ(アクチュエータ)が、屋根上に設置した加速度計(センサ)が揺れを感知すると、コンピュータ(コンピュータ)の指示に従って、数ミリ秒という速さで自動で動きます。

このように「アクティブ制振」を適用することで、「大空間構造物」の地震による変形を大幅に低減することができます。
もちろんこの際、ラチスシェルの各々の部材が負担する力も大幅に低減することができ、構造物の安全性を高めることが出来ます。
更にいえば、この技術で高い安全性を補償することができるようになれば、今までは安全性の問題で実現できなかった自由な形状をした大空間構造物を設計できるようになるかもしれません。

世の中があっと驚くような、かっこいい建築を一緒に作りませんか?
アクティブ制振を行っていない場合
アクティブ制振を行っている場合
狭い管内を自由に動き回る「やわらかいロボット」で
都市のライフラインを守る!

先進工学部 ロボティクス学科
先端メカトロニクス研究室
宮川豊美 教授

■研究の概要
原子力発電所や都市のライフラインなどの小口径管路網を非分解で点検する要求が高く、自走して点検作業が可能な管内移動点検ロボットが強く望まれています。このようなロボットには垂直管、曲管(ベンド管、L字管)、分岐管(T字管)、異径管などから構成されている配管設備に対して安定的に走行できる管内推進機構の実現が課題となっています。そのため管内検査ロボットは小口径の曲管、分岐管や異径T字管を走行可能でかつ防爆性、耐放射線性の要求事項をすべて満たす推進機構が求められています。この中で異径T字管の走行は難易度が高く、異径T字管を走行できるロボットの開発例が少ないのが現状です。
このような背景の中、小口径配管の垂直管、曲管やT字管の走行が可能でかつ異径T字管の走行が可能な小口径管内移動点検ロボットの開発を目指し、多様な走行方式の管内移動ロボット(車輪型、クローラ型、インチワーム型、ヘビ型など)を設計試作し、基本走行特性を調べています。今回はぜん動運動型の管内移動検査ロボットについて紹介します。

■移動原理
ぜん動運動は体節ごとに収縮と伸張を繰り返すことにより推進する方式で、体節の収縮と伸張を繰り返す方向と逆方向に移動します。このぜん動運動を利用した移動原理は、他の走行方式と比較した場合の利点は、①複数の部材を管軸方向に長く配置するために管壁とのグリップ力が強く、すべり等が少なく安定した移動が可能、②部材の弾性変形を利用するために複雑なリンク機構のようなものが不要であり、移動機構に必要な空間が小さい、③部材の伸長と収縮の繰り返しであるために移動のための制御がシンプル、などが挙げられます。体節の幅と同等の空間があれば推進が可能となり、管内移動には適した移動方式であると考えられます。

■管内移動ロボットの設計と試作
軸方向に収縮した時に径方向に拡大する機構を持つ部材を移動ユニットとし、推進機構の構成には、3台以上の移動ユニットが必要となります。今回は移動ユニット3台を、直列に連結させた構造の管内移動ロボットを設計しました。使用するアクチュエータはマッキベン型空圧アクチュエータとしました。
試作機は全長450[mm]、最大外径102[mm]、最小外径76[mm]で、エアチューブ(1.5[m]×3)を含めた重量は380[g]です。適用配管の内径は84~100[mm]です。そして最大牽引力は7[N]であり、この値は装置の自重の約2倍です。移動速度はv=1.5[mm/s]であり、今後改善が必要と考えています。
やわらかいロボット
発光する新しい材料を合成して世の中をもっと“明るく”する

基幹工学部 応用化学科
ハイブリッド材料研究室
大澤正久 教授

元素や元素が結びついたものを、化学物質と呼びます。自然のものも、人間が作ったものも、私たちの身の周りにある物全てが化学物質です。ですから、化学はとても身近な存在です。
「化学」と「ものづくり」はあまり縁がなさそうな言葉ですが、化学の力で分子レベルのものづくり(化学合成)が可能となります。みなさんのスマホにも化学合成されたパーツがたくさん使用されています。

私たちの研究室では化学の力で「発光する新しい材料」を合成しています。有機ELディスプレーのためのRGB(赤緑青)に発光する材料だけではありません。

例えば、擦っていくと色が変わる材料や、アルコールに応答して色が変わる材料などを合成しています。乗り物の表面に塗布することで障害物とこすれた箇所を検出し、修理に役立てることが可能になります。またエタノールの検知が可能になれば、飲酒取締の指示薬としての応用が期待できます。

ただやみくもに光るものを合成するだけではありません。より優れた材料を合成するためには、発光する仕組みを理解し、分子設計をすることが必要です。数オングストローム(1オングストロームは100億分の1メートル)の大きさの置換基の有無によって生じる構造の違いから、その性質が大きく変化することも珍しくありません。合成して初めて分かることもたくさんあります。美しく光る物質の合成に成功したときの感激もひとしおです。

分子レベルのものづくりへ参加してみませんか?
エタノールで発光色が変わる
擦ると発光色が変わる
【大学設立50周年記念座談会】
実験の積み重ねが発見につながる。
その環境が整っている。

ノーベル物理学賞受賞者/日本工業大学 特別栄誉教授 中村修二 教授
基幹工学部応用化学科 佐野健一 教授
基幹工学部応用化学科 池添泰弘 教授

高輝度青色LEDを発明・開発した功績により、2014年のノーベル物理学賞を受賞した中村修二氏が、日本工業大学の特別栄誉教授に就任。佐野健一教授、池添泰弘教授と、大学の理想的な教育・研究環境や学生に期待することなどについて語り合いました。

この座談会の様子は、2019大学案内にも掲載しています。
中村修二教授講演会 開催報告

平成29年10月19日(木)、本学体育館を会場に中村修二教授を招いての講演会が開催されました。

 青色発光ダイオードの製品化が始まった十数年前から「青色発光ダイオードの発明でノーベル賞を!」との期待は高まっていましたが、2014年、遂に現実のものとなりました。中村教授の実兄である康則氏が本学電気工学科を1975年に卒業した5期生という縁により、2007年6月、中村教授に「青色LED開発秘話」と題する講演で青色発光素子の開発にかけた熱い思いを語って頂きました。それから10年が経過し、この度、大学設立50周年の節目にノーベル物理学賞受賞者として「高効率青色発光ダイオードの発明とその後」の演題で再び講演会を開催することができました。本学の教育の根幹である「ものづくりに打ち込める学びの環境」と青色発光ダイオードの発明には、相通じる「技術者の魂」があります。
講演会
演題「高効率青色発光ダイオードの発明とその後」

 会場となった体育館には雨模様の天候にも関わらず、本学学生や教職員をはじめ、多くの方が来場され、1,400席を用意した体育館はほぼ満席となりました。また、この模様を中継配信した教室でも多くの学生が聴講しました。講演で中村教授は、高効率青色発光ダイオードの発明に至る開発の裏話、その後の進展、さらには今後の応用研究の方向性などを中心に身振り手振りを交え熱意をもって語りかけました。照明がLEDに変われば世界中で膨大な電力の削減が可能となり地球環境の保全に貢献できることなど、LEDを応用したワクワクするような未来社会の展望に引き込まれました。

 これからの未来を担う学生に対しては「人間は苦労しないと成長しない。苦労してものづくりに励み、成功体験を重ねることが重要である」と話され、多くの聴衆も中村教授の経験に裏打ちされた話に食い入るように聞き入っていました。また、講演後には、学生を中心に多くの方からの質問があり、中村教授は一つひとつ丁寧かつ真摯に応えられました。

特別栄誉教授称号記授与
本学第1号の特別栄誉教授に就任

 大学設立50周年記念講演会の終了後、成田健一学長より中村教授に日本工業大学特別栄誉教授の称号記が授与されました。今後、本学の教育、研究の推進に先導的な役割を担っていただけることを期待します。

学長対談
ものづくりに打ち込める「学びの環境づくり」

 本学の特別栄誉教授にご就任いただいた中村教授、そして本学で学び会社を経営されている実兄の康則氏、成田学長を交え、「これからのものづくりに求められるものは何か」をテーマに鼎談が行われました。

 中村教授は、大学に入学するや工学に打ち込めると思っていたものの、工学とはかけ離れた授業ばかりで学校に行く気を失った、という自らの大学時代を振り返りつつ話されました。「1年次から専門科目が学べ、学生が自前で実験装置を製作するなど、自由にものづくりができる環境は素晴らしい」と本学の特徴である「実工学教育」に称賛を贈って頂きました。また「ノーベル賞につながった青色LEDの開発に成功したのは、私自身が実験装置を自作し改良する技術を持っていたから。失敗を繰り返しながら、そのたびに原因を考え抜き、装置の工夫改良を自ら短時間で行いながら研究できたことが一番の要因」と実工学教育の大切さを強調されました。

応用化学科へのメッセージ
独自の実工学教育に基づいた教育を

 中村教授は、ご自身の青色発光ダイオードの発明を振り返って、本学の掲げる実工学教育がより効果を発揮するのは化学、特に材料化学の分野だとの考えを常々お持ちだったそうです。本学に2018年4月に誕生する応用化学科については「他大学の応用化学科を追随するのではなく、独自の実工学教育に基づいた教育方針を貫いてほしい」と期待を寄せられました。さらに、文部科学省「平成29年度私立大学研究ブランディング事業(タイプB)」に採択された「全固体電池」の研究にも関心を示され、「こうした新技術に取組む挑戦的な姿勢も素晴らしい」との評価を頂きました。

まだ誰も知らない映像経験が"リアル"をもっと楽しくする

先進工学部 情報メディア工学科
映像・メディアアート研究室
大山麻里 教授

今、急激にメディアが発達し、普及しています。
例えば映像は、少し前まではテレビ局など限られた人たちが発信するものでしたが、現在は、YouTubeなどで、誰もが一般社会に向かって映像を公開できます。

また、四角いスクリーンで見るのが普通だった映像が、大きいものではビルの壁面、小さいものではスマホの画面など、いろいろなところで視聴できるようになりました。
AR(拡張現実)、VR(仮想現実)なども使われるようになってきています。

「新しいメディアが社会に役立つ」かどうかは、メディアの技術力と共に、そのメディアが伝えている中身(コンテンツ)の面白さや、意義が、ますます重要になってきます。

私は、ドーム型の全天周映像、プロジェクションマッピング、インタラクティブテーブル、テレビCM、美術としての映像インスタレーションなど、各方面の映像コンテンツを、監督&アーティストとして手がけてきました。自然の林の中で映像インスタレーションを発表したこともあります。
今年度は、日本工業大学のCMのプロデュースを行いました。

今後、情報メディア工学科で、映像とインタラクティブコンテンツなどのコラボレーションを進め、人の五感で体験でき、感動できる「体験型映像コンテンツ」の研究を進めていきます。
大山教授がプロデュースした本学CM
大山教授が手掛けた映像コンテンツ集
大山教授が制作した現代アート作品
目指せ、現代の伊能忠敬!
―MMSで現実世界を電脳世界へ―

基幹工学部 機械工学科
制御システム研究室
石川貴一朗 准教授

地図というと一昔前は紙媒体、最近では、GoogleMapsなどで提供される電子地図が思い浮かぶと思います。この地図を三次元に、さらに高精細に空間の情報を収集するためのシステムがMobile Mapping System(MMS)です。

MMSは車両の上にGNSS(※1)、IMU(※2)、レーザスキャナ、カメラといった様々なセンサを搭載し、道路を走りながら周辺の環境を三次元で計測するシステムです。MMSはGNSSとIMUで車両の位置と姿勢を推定し、レーザスキャナで周辺の物体までの距離を測ります。

さらにカメラで撮った画像から色情報を取得することで、色つきの三次元情報を取得することができます。レーザスキャナは1秒の間に数万点~数十万点を計測できるため、細かく形状を取得することができます。

MMSで取得された点群は、高精度な三次元地図だけでなく、インフラの管理や、道路付帯設備の調査や、景観シミュレーション、災害調査など様々な分野に応用されているほか、高精度三次元地図は、最近では自動運転用の基盤データとしても期待がされています。しかしながら、MMSの三次元点群は一回の計測で数千万点~数億点になるため、これらに利用するためには、この点群の中から自動で必要なデータだけを抜き出してくる必要があります。

制御システム研究室では、MMSに関連する技術について、以下のような研究を行っています。


■GNSSが使えない環境下での位置推定精度向上
GNSSが使えない状況が続くとMMSの推定位置には誤差が累積していき、精度が悪化してしまいます。この精度悪化を防ぐためにLaser Odometry and Mappingと呼ばれる手法で累積誤差を軽減する研究を行っています。

■車が進入できない場所を計測するMMSの開発
MMSは災害後の被災状況調査にも使用されていますが、発災直後に道路が寸断等されていれば計測することができず、復旧後の調査が主な役割でした。一方で発災直後の被害状況調査はその後の人命救助や復旧に重要です。そこで、本研究室では、走破性の高い水陸両用車両にMMSと同様のセンサを搭載し、従来のMMSでは進入できない場所や、人が入れない場所を遠隔で安全に三次元計測するシステムの開発も行っています。(H25~H27年度 総務省消防庁 「消防防災科学技術研究推進制度」の助成(研究代表杏林大学)を受けた研究成果に、さらに改良を加えたものです)

■三次元点群からの物体認識
MMSの計測データを効率的に使用するために、機械学習などにより、三次元点群データやMMSで取得した連続画像から物体を自動で認識する研究を行っています。自動認識する対象は、架線、電柱、標識、縁石など多岐にわたります。


(※1)GNSS(Global Navigation Satellite System) GPSなどに代表される衛星測位システムの総称です。高精度なものだと、誤差数cmで位置を計測することができます(GPSはアメリカの測位衛星、日本の測位衛星はみちびきです)
(※2)IMU(Inertial Measurement Unit)慣性計測装置、加速度や角速度を計測するセンサです。姿勢を計測するために使います。
この動画は、MMSで本学宮代キャンパスを計測した結果です。灰色の点はカメラの画角外なため色が付けられなかった点です。建物の壁面形状だけでなく、路面の凹凸まで計測できます。
本学にあるSLをSFMと呼ばれる手法を使い、カメラだけを使って三次元復元したものです。
通常のMMSでは移動できない場所を計測するための水陸両用車両です。上に搭載されているのがレーザスキャナです。動画は学内にある実験場で走行性能試験をしている時の様子です。最高時速は18kmです。
水陸両用車両で池の中に入りながら周囲を三次元復元している様子です。この車両はある程度の水深があるところでは完全に浮き、タイヤについている水掻きで推進力を得ています。動画後半は、この時の三次元復元結果です。NDT-SLAMと呼ばれる手法で三次元復元したものです。
子供の頃に夢見た変形ロボット。
その夢を形にした「極限作業用4足歩行ロボット」の研究・開発!

先進工学部 ロボティクス学科
ロボット機構設計研究室
樋口勝 教授

お掃除ロボットを筆頭に、今やロボットは私たちの身近な存在になりました。本学の人型ロボットの「ニコット」もテレビドラマの中で主人公の家に当たり前のように住んでいました。しかし、歩行ロボットは、災害現場や原発内のような極限作業での活躍が期待されているにもかかわらず、おもちゃ以外では実用化はされていません。その大きな理由の一つに、車輪と比べてエネルギー効率が悪いことがあります。これは、歩行ロボットが仕事を何もしていなくても本体を支持するために多くのエネルギーを必要とすることが原因です。

この問題を解決する方法として、本体を支持するためのモータと、移動するためのモータを完全に分離する方法があります。しかし、これを軽量で単純な構造である回転関節だけで実現しようとすると、水平方向には広い範囲で動くことはできても、階段や坂道に対応するために必要な鉛直方向には余り動くことができないロボットになってしまいます。これでは、歩行ロボットの長所である、段差や階段や不整地のような車輪では移動が困難な場所で安定した移動ができる悪路走破性が損なわれてしまいます。そのため、多くの歩行ロボットではこの方法は用いられていません。

ここに、合体・変形ロボットを人まねではなく自分のオリジナルのデザインでつくるという子供のころからの夢からヒントを得て、エネルギー効率は良いが悪路走破性はそれほど高くない形態と、悪路走破性が高いがエネルギー効率はそれほど良くない形態の2つの形態をとる変形ロボットにすることで、この問題を解決することを考えました。そして、極限作業用を具体的な適用対象とし、ロボットの設計から製作まで全て日本工業大学で行う“Made in NIT”にこだわり、この変形歩行ロボットを開発しました。

ロボティクス学科の研究室の多くは、3Dプリンタ、CNCフライス盤、レーザ加工機等のコンピュータによる自動制御で部品を製作することができる機械があり、それらを駆使してこのロボットは製作されています。そのため、ここでは紹介できませんが、変形以外にもこのロボットには独自の機構や機能、そして遊び心のあるデザインが沢山ちりばめられています。

価値があるものを開発する過程で、自分の夢をかなえ、さらに、自分なりのこだわりや遊び心をいれ込むことができることは、自分で設計から製作まで行うからこそ味わうことができる特別な喜びではないでしょうか。

なお、本研究はJSPS科研費JP24560162の助成を受けたものです。
関連動画
「ねばり強いコンクリート」なら
巨大地震だって怖くない!

建築学部 建築学科
建築材料工学研究室
菊田貴恒 准教授

「コンクリート」という材料について皆さんはどのようなイメージをお持ちでしょうか?冷たい、重い、頑丈そう・・・など、さまざまなイメージがあるかと思います。確かにコンクリートは触ると冷たいですし、水よりもだいぶ重い材料です。また、超高層建物やダム、高速道路などに使うくらいですから、丈夫な材料とも言えるかもしれません。しかし、丈夫そうなイメージのあるコンクリートにも大きな弱点があり、それは「引張方向の力に極端に弱い」という材料的な特徴です。

この弱点を克服しコンクリート自体の耐久性や安全性をさらに向上させる技術の一つとして「繊維でコンクリートを補強する」繊維補強セメント系複合材料というものが注目されています。コンクリートは引張方向の力に弱いため、地震などの荷重が作用すると簡単にひび割れ幅が拡大していきますが、コンクリートに化学合成繊維や金属繊維を適切に混入することでひび割れ幅の拡大が抑制され、結果として大きな引張力にも耐えられる「ねばり強いコンクリート」になります。

研究では、繊維物性の異なる複数の繊維を適切に組み合わせてコンクリート中に混入し、「より大きなねばり強さを有するコンクリート」を実現するための調合設計手法について検討を進めています。引張に弱いコンクリートですが、繊維と上手く複合化させることで金属に匹敵するねばり強さを有したコンクリートも実現できるようになるかもしれません。
普通のコンクリート
菊田先生が研究している、
ねばり強さを有するコンクリート
超進化無線通信『5G』ってなに?
無線ネットワークの進化で次世代へ挑戦!

基幹工学部 電気電子通信工学科
無線伝送メディア研究室
平栗健史 教授

送信側と受信側の双方に複数のアンテナを用意し、複数のアンテナから異なる信号を多重で送受信することによって一度に大量の通信を行うことで大容量通信が可能となるMIMO(Multiple Input Multiple Output)という技術があります。この技術は 無線LAN(Wi-Fi)ではIEEE 802.11n という規格で実現されています。この方法により従来よりも通信スループットが飛躍的に向上しました。この方式は基本的には送信側と受信側が1:1でしたが、異なる信号を複数の受信局ごとに分離し,同時に受信できる受信側の数を増やした方式をMU-MIMO(Multi User-Multiple Input Multiple Output)といい、最新の無線通信方式として携帯電話のLTE-Advancedや無線LANのIEEE 802.11acで採用規格化されています。このMU-MIMOはスマートフォンやタブレットが増加している現在、快適に無線LANを使用するために必要不可欠な技術です。

研究ではこの現行最新の無線通信方式であるMU-MIMO伝送を、物理層(ハードウェア)とMAC層(ソフトウェア)を統合してシミュレーションできる計算機シミュレーターを試作開発しています。また,現在,数百の送受信アンテナを用いて,更なる多重伝送を目指した5Gや次世代無線LANで用いられる予定のMassive MIMO伝送と呼ばれる次世代伝送方式についても新しい方式を提案しており,開発したシミュレーターを用いて比較検討していく予定です。

なお、本研究は,H28-29年度総務省受託研究 「戦略型情報通信研究開発推進事業(SCOPE),電波利用推進型研究開発」に採択され,プロジェクトチーム(新潟大,東工大)で分担して研究開発を進めている研究成果の一部です。
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基幹工学部 応用化学科
先駆物質化学研究室
池添泰弘 准教授

浮力はよく知られた自然現象ですが、その浮力を少し違った視点で見てみましょう。

ニュートンが発見した万有引力の法則は、地球の引力(重力)に関する法則です。しかし、私たち人間が海に潜ろうとすると、私たちの体には重力と正反対の方向に力がはたらきます。この力は、海水が人間に与える浮力で、浮力が私たちの体を持ち上げていることになります。海水と人間を別々に考えれば、引力(重力)しかはたらかないはずなのに、ちょっと不思議な感じがしますよね?

実は、浮力は物体にはたらく力の「向き」を変えてしまうことがあります。これは、同じ方向に走る2台の車があったとき、速い方の車から遅い方の車を見ると、遅い車はまるで後ろに向かって動いているように見えるのと同じことです。

アルキメデスの原理は重力における浮力の原理ですが、私が見つけた磁気アルキメデスの原理は、磁力における浮力の原理です。重力の影響しか考えなかった場合、気体が液体に与える浮力によって、液体が持ち上がることは絶対にありません。しかし、磁力の影響を考えると、気体が液体に与える「磁気的な浮力」が生じて、液体が持ち上げられてしまうことがあります。それを可能にする気体が酸素です。酸素は、生物にとって不可欠なだけではなく、磁石に強くひきつけられるという珍しい性質を持った物質なので、巨大な浮力を生み出すのです。
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