日本工業大学

SDGs関連研究

2022/01/12

水で水をきれいにする

img04-01-1.jpg飲み水の確保は、生命維持に直結する問題です。GOAL6の達成目標の最初に、2030年までにすべての人が安全で安価な飲料水を平等に飲めるようにすることが挙げられています。
 水で水をきれいにできれば、飲み水の確保をめぐる様々な問題が解決できるという発想が私たちの出発点です。流体力学を中心に、様々な技術を融合させて、その実用化に向けて研究を進めています。
 水の浄化では、フィルタでゴミを取り除いた後、仮に透明になっても、さらに殺菌と化学物質(洗剤など)の分解が必要です。
 オゾン(O3)を使えば、その強力な酸化力で殺菌・脱臭・化学物質の分解による浄化ができます。オゾンは比較的短い時間で無害な酸素(O2)に戻ります。また、薬品は耐性菌をつくりますが、オゾンは細胞のたんぱく質を物理的に破壊するので、耐性菌をつくらないという利点があります。
 しかし、オゾンを空気中の酸素でつくると、光化学スモッグの原因となる環境汚染物質である窒素酸化物(NOx)まで発生する心配があります。
 そこで水の登場です。水を電気分解して高純度な水素と酸素に分け、環境汚染物質の発生なしに酸素をプラズマでオゾンにします。このオゾンで水をきれいにします。一方、水素は燃料電池に供給され、燃料電池で電気を発生します。この電気を装置の電源の一部として利用します。これで省エネな水で水をきれいにする装置ができます。さらにオゾンと水の接触時間を長くすることで同じ電力でも殺菌力を上げることができます。流体力学を駆使し、水で水をきれいにする装置を実用化に近づけていきます。
 太陽光パネルでも駆動できる小規模な装置を開発し、インフラが整備されていない世界の様々な地域、日本の災害地に設置できるものにすることを、学生たちとめざしています。

 

基幹工学部 機械工学科
桑原拓也准教授

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