日本工業大学

SDGs関連研究

2023/07/18

脳動脈瘤の破裂メカニズム解明に向けた模擬血管材料内の応力場可視化手法の開発

日本人における死因として非常に多いクモ膜下出血は、脳動脈瘤の破裂が主な原因であり、血行動態と血管壁との相互作用が重要な役割を果たしていることが数値流体解析モデル等から明らかにされています。一方で、実際の血管の不均質性や構造変形を考慮した解析は非常に難しいことが知られています。このような血流と血管壁との相互作用関係を実験的に明らかにすることができれば、クモ膜下出血の原因となる脳動脈瘤の破裂等のメカニズムの解明や予防・治療方法の確立といった重要な知見が得られると考えられます。
そこで本研究では、特に脳動脈瘤の破裂の実験的解明を最終目標とし、その初期段階として、光弾性法を用いた非接触・非定常による応力可視化手法を適用可能な模擬血管流路を新規開発することによって、液体流動に伴う模擬血管流路の応力状態の可視化技術開発を行いました。

図1は今回製作した高分子ゲル円管流路(模擬血管流路)です。本研究では光弾性法を用いた応力可視化手法を適用するため、生体模擬が可能であり、さらに高透明性・複屈折性を示す材料を選定し、図1のような各条件を満たす高分子ゲル円管流路(内径3 mm)の開発に成功しました。今回開発した高分子ゲル円管流路(模擬血管流路)に流体を流した際に、流路壁面に作用する応力に対応した位相差場の光弾性法を用いた可視化結果は図2になります。図中のマスク処理されている領域は液体が流動している箇所です。位相差値は、壁面近傍で高くなり、壁面から遠ざかるほど低くなる傾向を示しています。また、流量が増加するに伴って位相差値も次第に上昇することを確認しました。これは、流体応力が流路壁面に作用することで、高分子ゲル内部を垂直応力が伝播していることが考えられます。このように、液体流動に伴う模擬血管流路の応力状態の可視化に成功しました。

本研究はまだ初期の段階でありますが、少しずつ重要な実験的知見が得られ始めています。今後は、本研究の成果を踏まえて、さらに実験研究を推進し、最終目標であるクモ膜下出血の起因となる脳動脈瘤の破裂解明など、医工学分野の学術進展に貢献していきたいと考えています。本研究成果は「可視化情報学会誌 43,167(2023)」に掲載予定です。

小林研図1・2.jpg

小林先生と学生.jpg
小林助教と学生たち(ソフトマター工学研究室所属)


基幹工学部 機械工学科 小林和也 助教

◆学生◆
ソフトマター工学研究室 3年
山野井郁弥、増田恵治、小林竜也

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