文章表現・日本語学

中尾 比早子 准教授

Laboratory

研究室紹介

 みなさんは人と話したり書いたりするとき、自分の発することばについて、何か意識を持って使っていますか。多くの人は無意識のうちにいくつもの選択をしながら、表現しているものと思います。
日本語学では、会話や文章を対象として、文法、表記、意味、音声などさまざまな方面からことばの研究を行っています。

主な研究紹介

副詞研究

 私が研究テーマとして扱っているのが、副詞です。副詞は動詞や形容詞のように活用があるわけではなく、文法カテゴリーのどこにも当てはまらないものが雑多に混じった品詞です。そのために、研究が後回しにされてきました。わかっていないことがたくさんあります。面白いことに、最初から副詞だったことばはあまりなく、形容詞や形容動詞などが固定化されて元の意味を離れ、次第に副詞化していく経路をたどることが多いです。例えば、「決する」(動詞)→「けっして」(副詞)、「ひどい」(形容詞)→「ひどく」(副詞)などです。

 副詞の中にはさらに程度副詞というカテゴリーがあり、その語群のひとつに「極めて程度が高い」ことを表すことばがあります。「とても、非常に、結構」などです。「非常に」は字のごとく「常に非ず」で、「非常口」「非常階段」のように常の状態ではないときのものを指し示すことばです。「非常に」は明治時代頃に成立しました。明治時代には「非常の」「非常な」もよく使われていましたが、現代ではほとんどが「非常に」であり、「とても」と同じ意味で使われます。書きことばでも話しことばでも使用可能なので、便利に使われています。
また「結構」も程度が高いことを表すことばで、もとは「組み立てて作り上げる」という意味の名詞から、程度の高い意味を表す副詞に変化しています。一語一語も変化をしていますが、ことばのグループとしても変化の激しい語群であると言えます。
ちなみに今は「超、めっちゃ」がよく使われます。

 なぜ使っているうちにことばが変化していくのか、どんな風に変化していくのかが面白くて研究しています。同じような意味で使われていることばが複数ある場合もあれば、ある意味ですでに使われていることばがあれば、改めて新たなことばは作られない場合もあります。同じ意味でも強調しようとして常に新しい表現を使っていくのが、さきほど挙げた程度が高いことを表現する副詞です。若者がどんどん新しいことばを作り上げていきますね。
次にどんなことばが登場してくるのかも楽しみです。

『日本国語大辞典第2版』
辞書にはこれまでのたくさんの研究の蓄積があります