アメリカ現代詩

関根 路代 講師

Laboratory

研究室紹介

アメリカ文学を研究しています。専門はウォルト・ホイットマン (Walt Whitman, 1819-92)という19世紀の詩人です。新聞記者であった彼がなぜ詩人になったのかという疑問を抱いて以降、先住民表象、西部表象、身体表象という観点から研究を進めてきました。現在は、詩と歌という観点から、アメリカへのバラッドの流入とその受容について調査・研究をしています。その他に、アメリカの桂冠詩人の紹介や詩の翻訳も行っています。

主な研究紹介

詩人研究

ホイットマンはアメリカ現代詩というフィールドを切り開いた作家として高く評価されてきました。その作風は伝統的な韻律を廃した自由詩を基調としたもので、テーマは当時タブーとされていた同性愛やセクシュアリティー、政治的なものと幅広くあります。また、南北戦争とそのトラウマに苦しむ人々の姿や社会の在り方をいち早く題材にしたことでも知られています。そのようなこともあり、ホイットマンはアメリカを代表する民主主義の詩人と呼ばれています。現実に民主主義が達成されないことへの苛立ちが、彼が詩を書く際の原動力になっていました。西部開拓や南北戦争の中で繰り広げられた暴力的な出来事を前に、書くことの不可能性に対峙しつつも詩を書き続けたのがこの詩人の特色です。そのように揺れ動きながらも、彼の生身の体から発せられる声が立ち上がる場所/空間としてのテクストを時代背景と照らし合わせながら分析・研究しています。

アメリカン・バラッド

バラッドとはもともと、文字を持たない民衆によって歌い継がれてきた口承物語歌ですが、文学ジャンルとしてのバラッドには、3つの分類があります。1つめは、先に挙げたヨーロッパ各地で歌い継がれた物語歌である伝承バラッド。2つめは、ブロードサイドに印刷され、政治的・社会的な事件や出来事が題材であったブロードサイド・バラッド。3つめは、リタラリー・バラッドです。これは、ウィリアム・ワーズワース (William Wordsworth, 1770-1850)とサミュエル・テイラー・コールリッジ (Samuel Taylor Coleridge, 1772-1834)の共著Lyrical Ballads (1798)に端を発するもので、伝承バラッドを模倣した創作バラッドということができます。印刷技術が発展したことで、「失われつつある」バラッドを記録に残そうという動きが広まる中、リタラリー・バラッドが生まれました。そのようにヨーロッパでバラッド熱が高まる一方、アメリカでアメリカン・バラッドなるものが生まれます。バラッドはアメリカに移民とともに流入し、形を変えながら歌い継がれました。パイオニアたちに歌われた「ジョン・ヘンリー」や、独立戦争や南北戦争時に歌われた「ヤンキー・ドゥードゥル」は今でもよく知られているものです。このように、民衆によって歌い継がれた歌は、フォークソングあるいはアメリカン・バラッドと呼ばれています。アメリカン・バラッドとは、アメリカ的経験を後世に伝える民衆による口承芸術と定義することができます。そのようなアメリカン・バラッドの成り立ちと受容について研究しています。

桂冠詩人紹介

アメリカでは通例、1年ごとに桂冠詩人が選ばれます。桂冠詩人は詩を普及するという役目を負い、1年間、全米図書館が企画するプログラムやイベントに参加したり、独自のプロジェクトを立ち上げ、運営することもあります。そのような桂冠詩人の動向を、翻訳をまじえ紹介しています。

ニューヨーク ブルックリン橋