英語圏文学

南谷 奉良 講師

Laboratory

研究室紹介

関心分野は英語圏文学で、専門としてはアイルランドの作家ジェイムズ・ジョイス(1882-1941)の作品を中心に研究をしています。他に動物の表象にも強い関心をもっています。教育面では、21世紀の学生にふさわしい授業方法を開発、提示することを心がけています。

主な研究紹介

私の研究分野は、近年ますます面白さを増している英語圏文学です。専門は『ユリシーズ』や『フィネガンズ・ウェイク』などの作品で知られる作家ジェイムズ・ジョイスの研究です。ジョイスは「20世紀最大の小説家」などと呼ばれ、「意識の流れ」や「内的独白」などの実験的な文体を活用したこと、数々の新造語を創り出したことで有名です。しかしそうした技法的な側面以外で彼の作品を魅力的にしているのは、私たちが生きている普段の生活を面白くしてくれることです。彼の作品を丹念に読んでいると、それまで「つまらない」と思っていたものが爆発的に面白くなったり、特に関心のないもの、疎遠なものがとつぜん結びついたりします。どれも包容力のある作品ばかりなので、21世紀の現在でも日々新しい読者を呼び入れています。

ジョイスの初期作品には、15篇の物語からなる短篇集『ダブリナーズ』(1914)と、自伝的長篇小説『若き日の芸術家の肖像』(1916)があります。以下の共著書は新しくJapanese James Joyce Studies(JJJS)という新しい専門誌のシリーズとして刊行された、両作品に関する日本初の論文集(100周年記念)です。私はそれぞれの論集で、第7章と第1章を執筆しています。また100年以上にわたるジョイス研究の書誌情報を整理して紹介するウェブサイトStephens Workshopも開設しています→https://www.stephens-workshop.com

また別方面の研究として、動物の表象、動物をめぐる近代的諸制度についても強い関心があります。現在の私たちがある動物に対して抱くイメージや価値観はどのようにしてつくられたのか。かつて動物は人間社会のなかでどのように扱われ、どのように見られていたのか。こうした疑問を中核に各種文献を渉猟していくと、動物たちの多様な姿と社会における生態、人間社会が「動物」を境界画定する際の諸問題を理解することができ、また現在を生きる私たちとのつながりや断絶を知ることができます。

左の絵は、1920年に刊行された猫に関する雑学や知識、文化史を網羅的に蒐集した古典的著作の1ページです。大興奮で遊んでいた毛糸玉に絡めとられる猫の末路が描かれていますが、面白いことに、オチである右下の猫を、あらためて左上の毛糸玉に読みこむとき、この絵は内容と形式を一致させる形で、「ぐるぐる」巻きの円環になっていることがわかります(毛糸玉になった猫の毛糸玉で遊ぶ猫が毛糸玉になった猫の毛糸玉で遊ぶ猫が….)。現在の私たちがSNSで面白い動きをする動物の写真や動画をシェアしているのにも似て、およそ100年前でも、こうして身近な動物にまつわる「あるある」をユーモラスな形で共有しているわけです。

(左)Carl van Vechten, The Tiger in the House: A Cultural History of the Cat (New York: Alfred A. Knopf, 1920)
(右)Henry Neville Hutchinson, Extinct Monsters and Creatures of Other Days: A Popular Account of Some of the Larger Forms of Ancient Animals Life (London; Chapman and Hall, 1893)

しかし、かつての人々が今の私たちと同じ価値観や考え方を持っていたと想定することは、多くの場合、重大な錯誤を生みます。すこし派手な例で、恐竜を考えてみます。恐竜は人類よりはるか以前に地球を支配していた優占種ですが、人類知との付き合いは浅く、“dinosaur”の分類と名称ができたのも19世紀中盤のことです。当時では恐竜の身体や生態、特に地質学的時間や関する理解は大きく異なっていました。例えば1905年12月3日付の『ニューヨーク・タイムズ』紙の記事では、3年前にモンタナ州で発掘されたTyrannosaurus rexの化石がアメリカ自然史博物館で復元されていることを報じているのですが、その恐竜を「知られているかぎりでは最強の戦闘的な動物」と形容した上で、「約800万年前」という推定生息年代に強い驚きを示しています。そのような当時の驚きを念頭にして、右の絵を見てみて下さい。19世紀末にオランダの動物画家によって描かれた絵で、一人の男性がAtlantosaurusと命名された巨大な竜脚類の、自分の身長を凌ぐ大きさの大腿骨に触っています。今の私たちはコンテンツとしての恐竜にすっかり慣れきっていますが、当時の人々にとって巨大な生物の痕跡は未だ全貌が知れない、不安と興奮の種そのものでした。その圧倒的に巨大な大腿骨を触る「手」が何を感じているか、想像をめぐらしてみて下さい。既知を疑い、未知を発見し、それを喜ぶこと。そこからとてつもなく面白い人文学への入口が開けてくるはずです。

英語教育

授業は学生と教員が共同でつくりあげるものだと考えています。できるだけ学生の「現在」をとりこんで授業を行うことを意識していますので、取り扱う題材や方法について意見や提案があれば大歓迎です。テキストの英語を、文字媒体のみではなく、動画や音楽などの視聴覚資料を利用したり、ときにはスマートフォンを使って理解を促進する試みも行っています。最近では、独自に開発した匿名掲示板「Outis」(ウーティス)を使って授業を行うことも検討しています。英語に関する相談も随時受け付けていますので、どうぞ気軽に声をかけて下さい。