プラズマ理工学

服部 邦彦 教授

Laboratory

研究室紹介

私の研究室にはいくつかの研究テーマがあります。主なキーワードとして「プラズマ(放電、高電圧)」、「電磁波計測」、「物理教育」が挙げられます。静電気放電や雷などの放電現象は、物質の第四の状態といわれるプラズマ(電離気体)が関わっています。このプラズマを生成・維持する基礎研究や工学応用に取り組んでいます。さらに、この生成されたプラズマの温度や密度などの物理計測をする手法としてレーザや電波を使った診断法の開発を行なっています。この電磁波を用いた計測は他の工学分野にも利用できます。

物理教育では、大学ばかりでなく小中学生を対象に理科実験器具の開発や出前授業を行なっています。

主な研究紹介

放電とプラズマの基礎研究

どんな物質でも数万度に加熱すると、プラズマになります。このプラズマを生成するにはいくつかの方法がありますが、大気圧もしくは低気圧中の気体に高電圧(数万ボルト)を加えると気体がプラズマになります。また、電子レンジに使われているような電磁波を用いてもプラズマが生成できます。この生成法の違いによりプラズマの性質が変わったりします。これらのプラズマを産業応用するためには、生成法ばかりでなく安定に維持することも必要です。

私の研究としては、1.針-平板電極を用いた大気圧プラズマ放電と気流による安定化、2.球雷放電によるプラズマ生成と維持、3.螺旋プラズマの生成と維持、4.水中アーク放電の生成などの基礎研究を行なっています。

図1 螺旋プラズマ

図2 球雷放電プラズマ

プラズマの工学応用

プラズマは、様々な産業応用に使われています。現在では環境、医療、農業など幅広い分野の応用研究が進んでいます。私の研究対象は、1.核融合プラズマ、2.電気推進機(プラズマエンジン)、3.環境応用です。

核融合プラズマは、次世代の原子力エネルギー資源として50年以上前から研究されている分野です。太陽や星の燃焼を地上で実現させる人工太陽といわれるものです。このプラズマの温度は1億度以上に達するため、密度や温度の物理計測を行なうには電磁波を用いた非接触計測が必要となります。このプラズマ診断法の開発を行なっています。

電気推進機(プラズマエンジン)は、人工衛星や宇宙探査機に使用しようとしているもので、小惑星探査機「はやぶさ」にも搭載されていました。このプラズマの加速現象などの基礎研究を行なっています。

環境応用は、水質の浄化や有害物質の分解をプラズマで行なうものです。

電磁波を用いた計測・診断法の開発

先に記載したプラズマ研究を行なうための診断法としてレーザ干渉計やマイクロ波反射計などの研究を行なっています。さらに、これらの基礎技術を応用したものとして、大型電波望遠鏡の鏡面測定、高圧送電線の検知、建築壁面内の非破壊検査などの開発を行なっています。

物理教育の教材開発とアウトリーチ

大学授業で使用する演示実験装置や学生実験の装置開発などをはじめとして、近隣小学校の教員と協働で理科教材の製作・提供をしたり、理科に関心をもってもらうための出前授業、理科教室活動を行なっています。たとえば、理科教材として「ケルビン発電機」、「エコラジオ」、「テスラコイル」の製作をしたり、理科実験を通しながら科学のしくみを教えます。特に、「真空砲」は、高校物理レベルの知識で大気圧と運動の法則が学べる面白い実験であり、派手なパフォーマンスのためいくつかのTV科学番組で紹介されました。

図3 製作したテスラコイル

図4 大型真空砲の実験(TVスタジオにて)

科学および工学を学ぶ学生へ

プラズマ研究は「総合科学」と言われ、機械工学、電気工学、材料工学、制御工学、計算機工学など様々な分野を必要とします。つまり、この研究の中には、様々な知見が必要となり、自分の得意分野が発揮できるテーマがあるということです。そういう意味では欲張りな研究分野とも言えます。しかし、その根源には数学、物理、化学などの基礎科目があります。

プラズマばかりでなくどんな分野を学ぶにしても、かならず基礎科目の勉強が必要となります。私は、実験分野の研究を長年していますが、実験装置を設計、製作(機械加工、電気工作ほか)し、データを取得、処理(プログラミング)するなど様々な知識や技術を総動員し必要としてきました。そういった中で大学生の時に学んだ基礎科目、専門科目の重要性を身にしみて感じてきました。これまでの、そしてこれからの皆さんの学びには、決して無駄なものは1つもありません。