日本工業大学 NIPPON INSTITUTE OF TECHNOLOGY

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大学概要

学長挨拶

「実工学教育のさらなる深化で
「生涯学び続ける技術者を育てる

学長 成田 健一

学長 成田健一

本学は本年(平成29年)、設立50周年を迎えます。我が国の高度成長期の真っただ中、昭和42年に、工業高校生が日本で唯一、推薦で進学できる大学としてスタートしました。建学の精神には「わが国工業技術の高度化に資しうる有為な人材を育成する」とあり、工業高校卒業生に対して、専門的な実験・実習・製図科目を初年次から履修させるなど、工業高校生の学習履歴を活かした本学独自の「実工学」の学びを展開してきました。機械実工学教育センターの工作機械群をはじめ、学生の実験・実習のための充実した設備は、本学の誇りです。一方、多くの大学が工業高校生に門戸を開き、また社会状況の変化に伴い工業高校生自体が減少するという背景から、本学への入学生も普通高校出身者が増え、現在は、ほぼ半々という比率になっています。

現在、文科省が進める大学改革においては、「実学」重視という方向性が打ち出されていますが、「実工学」を標榜してきた本学には、まさに追い風と言えます。しかしながら、今後の急速な社会の変化を考えると、工学という専門力に強いだけでは生き残れません。「実学」とは一言でいえば「役に立つ学問」と解されますが、「役に立つ」という言葉はそもそも大きな曖昧さを含みます。何にとって、誰のために役に立つのか、評価の期間は短期なのか長期なのか、意図した効果のみを評価対象にするのか等々、役に立つかどうかの判断には、必ず何を何に優先させるのかという「価値判断」が伴います。自らの技術が今後社会の中でどう位置づけられていくのか、時間(歴史)と空間(文化的な場)の双方から俯瞰できる技術者であることが今後ますます求められていきます。専門に強い大学というこれまでの評価を維持しつつ、教養教育にもこれまで以上に力を入れようとしているのは、そのような背景からです。

本学では、平成26年度から、いわゆるFirst-Year Experience として、文章能力トレーニングなどの「学習基盤科目」を必修化するなど、急ピッチで教育改革を進めています。元来、工業高校では実習科目に取り組むため、数学・英語などの授業時間数が少なくなっています。それゆえ、これら基礎科目の理解に十分でない部分があることは、本学では当然の与条件としてカリキュラムが組まれてきました。今できないのは、学ぶチャンスがなかっただけ、そのように受けとめる本学の伝統は、入学生が多様化した現在、よりきめ細かく学生一人ひとりの達成度に応じたカリキュラムに進化しつつあります。レベルに応じた適切なハードルを明確に示し、誰もが安心して解るまで繰り返し学べるプログラム、それによって確実に付加価値をつけ、卒業生の質保証につなげます。

教育改革の最大の目的は、学生が自らの好奇心に従って自発的に学ぶ自律的学習者に変身することです。本学でも、アクティブラーニングやPBLを取り入れた授業等を工夫していますが、教育に「万能の処方箋」はありません。知の体験に目覚め、「学びのスイッチ」が入る瞬間がいつ起こるかは、人それぞれです。方法論に拘泥した教育改革ではなく、目の前の学生一人ひとりにとって今必要なことは何かを見極めること、それが本学に適した教育改革を進める鍵になります。そのためには、教員全員がその力量をもつことが不可欠です。本学が、教職員のさらなる資質向上に取り組んでいる背景がそこにあります。

現在、本学では埼玉県内の大学と連携して地域の医療福祉に取り組む「彩の国連携力育成プロジェクト」を進めています。建築系の学生が医療福祉の現場に飛び込み、自らの技術でどのような貢献ができるかを体験的に学んでいます。医療福祉のフィールドに工学分野が関わるという取り組みは、全国でも珍しいものです。他人(ひと)の痛みがわからない人間には、本当の意味でのイノベーションは起こせません。高齢化社会に向けて、工学の果たす役割は、まだまだ無限の広がりを持っています。

「実工学教育」のさらなる深化を武器に、現場で創意工夫できる技術者、自己研鑽というルーティンを身につけた「生涯学び続ける技術者」の育成にむけ、日本工業大学はこれからも進化しつづけます。