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日本工業大学の取り組み環境分野研究奨励助成金制度の採択研究一覧

優れた環境保全の研究に対して、助成金を支給

教職員、学生、学外者の枠を超えた共同研究体制として、保護者の会である後援会のご支援により設置された「環境分野研究奨励助成金制度」は、18年目を迎えました。この間90テーマの研究が取組まれ、学会への発表など社会への発信、環境管理活動への反映等々、着実に成果を収めています。2018年度採択研究の成果報告お知らせします。

2018年度 研究成果報告(抄) 助成金額(総額100万円)

空気清浄機能を有するハイブリット型高性能プラズマ洗濯機の開発

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写真1 コンパクトなプラズマ洗濯機

<研究期間>
2018年8月1日〜2019年7月1日
<研究代表者>
ものづくり環境学科4年 伊藤大智
ものづくり環境学科4年 矢澤 龍之
学生:ものづくり環境学科4年 谷 るりか

近年、共働き家庭の増加などのライフスタイルの変化により夜間に洗濯を行う事例が増えている。夜間での洗濯機の使用においては騒音や振動が問題となる。一方、環境保全の観点から見ると、化学物質である洗剤の使用は排水やその後の分解除去の問題、洗濯とすすぎによる水の消費の問題がある。さらにこれらの問題はランニングコストやエネルギー消費の問題にもつながる。洗剤を使用せず、水の消費が少なく、低騒音かつエネルギー消費量も少ない洗濯機が理想的である。
以上の洗濯機を取り巻く背景のもと、オゾンの強力な酸化力に着目し、オゾンバブリングによる洗濯機を提案し、開発する。オゾンは強力な殺菌能力や化学物質の分解能力を有することが知られており、オゾンを利用した空気清浄や汚れの分解に関する研究開発が進められている。しかし、オゾンの洗濯機への応用に関しては洗剤の補助的な利用や乾燥時の消臭・殺菌の利用に留まっているのが現状である。提案するオゾンバブリングのみの洗濯では洗剤を使用せず、一般的な洗濯機のように洗濯水の攪拌を行うためのモータも使用しないため、排水や騒音の問題を低減できるだけではなく消費電力も抑えられる。

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写真2 プラズマ洗濯機のデモンストレーション

さらに洗濯時におけるオゾンバブリングにより相乗効果として洗濯水も浄化できるため、洗濯水の再利用も可能で節水にも貢献できる。洗濯後の余剰なオゾンを大気に放出することにより空気清浄も行うことができ、空気清浄も兼ね備えたハイブリット型高性能プラズマ洗濯機を創出することができる。
本研究ではまず初めにオゾンバブリングを発生する低温プラズマ装置の選定ならびに微細気泡流の発生機構の検討を行った。検討の結果、オゾン発生においては低いエネルギー消費で効率よくオゾンを発生することができるプラズマ沿面放電方式を採用し、大気空気からオゾンを発生させることとした。オゾン微細気泡流の発生にはベンチュリ管構造を有したアスピレータとポンプの併用により洗濯水にオゾン気体を微細気泡として混合することでオゾンバブリングの発生に成功した。このオゾンバブリングを洗濯ガスとしたプラズマ洗濯機を構築し、人工的に汚れを付着させたウエス(布)を洗濯サンプルとして、洗濯能力を検証した。今回汚れとして用いたのは醤油、赤ワイン、ケチャップである。さらに騒音や消費電力も測定し、現在販売されている洗濯機と比較した。本研究により以下の成果を得た。
(1) 今回の実験では醤油汚れは9 minでの洗濯で落とすことができ、赤ワイン汚れは20minの洗濯で落とすことができた。一方ケチャップ汚れは20minの洗濯でも落ちなかった。油性汚れに対しての洗濯に難があるものの、水性汚れには効果があることを明らかにした。
(2) オゾン洗濯機の単位水量あたりの電気消費率は2.4W/Lであり既存の洗濯機と比較しても最も低いことが分かった。
(3) オゾン洗濯機の騒音は39dBであり、一般的な夜間騒音基準である45dBを下回る性能を達成した。
本研究で提案するプラズマ洗濯機は環境にやさしい萌芽的技術であり、今後益々重要となる環境保全技術である。今回はプラズマ洗濯機の汚れの分解効果と消費電力低減効果の検証に重点をおいて研究を進めてきたが、今後は未実施である相乗的な空気清浄効果の調査と洗濯効果の向上へと研究を展開し、技術を確立する。
具体的なプラズマ洗濯機の原理・構造、研究方法やその研究成果については別紙にて報告する。
最後に、2018年度環境分野研究奨励助成金を受けて、研究を遂行し、新しい研究成果を得ることができたことに謝意を表する。

教材用太陽光発電システムの開発

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写真1 太陽光パネル

<研究期間>
2018年9月1日〜2020年4月30日
<研究代表者>
共通教育学群 講師 鳥塚 潔
教員:応用化学科 教授 伴雅人
学生:ロボティクス学科2年 森優子、横森直

近年、再生可能エネルギーとして太陽光エネルギーに注目が集まっている。発電効率の高い太陽光パネルが市販されており、それを購入すればすぐに自家発電と思われがちだが、それほど単純ではなく、電気製品に電気を安定的に供給するためには、相応の電気回路が必要となる。本活動は、学生に太陽光パネルによる発電システムを構築させることで、学生に良い教育機会を提供することを目的とする。

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写真2 DC-DCコンバータ回路

太陽光パネルは物理教室の倉庫に眠っていたものを再利用した。パネルを載せるための架台を、パネルが鉛直に対いて45度傾斜するように設計・製作した。屋外で、18.8V、20.4Vの電圧が出力できることを確認した。定電圧を取り出すために、ICチップNJM2360を用いたDC-DCコンバータを作製した。さらにチャージコントローラにより定電圧を取り出した。ICチップにふれたことのない学生には、回路を自作することは良い経験となり、十分教育目的を果たしたと考える。今後は、色素増感型太陽電池も自作し、教育に資するものとしたい。

リサイクル炭素繊維を用いた水質浄化の新たな試み

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図1 使用済みCFRPからの回収CFを 用いた実験における透視度変化

<研究期間>
2018年7月1日~2019年6月30日
<研究代表者>
応用化学科 教授 内田祐一
教員:ものづくり環境学科 教授 雨宮隆
学生:ものづくり環境学科3年 青木裕治、平良けんじ、八木祐次
ものづくり環境学科4年 城島航大、森田敬登、細野芽依

軽量かつ高強度の炭素繊維強化プラスチック(CFRP)の需要は世界的に拡大しているが、その使用後の処理に関してCFRP中の炭素繊維(CF)が難燃であり、また回収したCFは劣化の懸念があることから、リサイクル方法が課題である。一方、CFは生物親和性があり、水中で微生物を固着させ生物膜を形成し、水質を浄化する機能を有することが知られている。

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写真1 使用済みCFRPからの 回収CFの表面に生成した生物膜

本研究では、これまで報告の無いリサイクルCFによる水質浄化作用を把握する実験を行った。まず焼成した工業用CF束をグルコース溶液に浸漬した実験を行ったところ、7日後のCODが初期値の1/3程度の値に低下し、未焼成CF束と同等の水質浄化作用を示した。使用済みCFRPを熱処理して得られた回収CFを食堂排水に浸漬した実験では、CODと透視度の日間推移から、工業用CF束より若干遅れて水質浄化作用を生じることが確認された。さらに実験後の生物膜が付着した状態の回収CFを繰り返し使用した実験でも、上記と同様に工業用CF束より若干遅れるものの水質浄化作用を示した。

光触媒ハイブリッドナノ粒子を利用した水浄化・抗菌システムの開発

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図1

<研究期間>
2017年8月1日~2019年2月28日
<研究代表者>
応用化学科 教授 伴雅人
学生:創造システム工学科4年 中嶋悠登、竹上玲
創造システム工学科3年 冨樫秀

光吸収によっておこる触媒反応を「光触媒反応」と呼ぶ。代表的な材料であるアナターゼ型の酸化チタン(TiO2)は、紫外光照射にて光触媒反応を起こし、空気浄化、水浄化、防汚、抗菌などの環境浄化作用を示すコーティングとして広く利用されている。粉末状の酸化チタンは、そのままでの使用は難しく、一般的に光触媒特性を付与させたい物質(製品)にコーティングして利用される。

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図2

本実験では、光触媒を水浄化に応用する一つの試みとして、ポリエチレングリコールを使用してペースト状にした酸化チタンをコーティングし加熱して焼き固める方法により砂利や小石などを試作した。そして、光触媒特性の評価として、メチレンブルー分解試験、亜硝酸性窒素分解試験、および、砂利を水底に敷設した水槽での熱帯魚と水草の飼育試験を行った。その結果、作製した酸化チタンコーティング砂利は、光触媒性能を発現することが確認(図1)でき、また苔や藻の繁殖による水槽の汚れが抑えられる現象を観察(図2)することができた。

ディープランニングによる画像確認を用いた植物図鑑システムの開発

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図1 システム構成

<研究期間>
2017年8月1日~2018年7月31日
<研究代表者>
電気電子通信工学科 教授 高瀬浩史
学生:情報工学科4年 谷澤勇樹
情報工学科3年 高山太雅、中嶋大貴、飯田椋太、窪川諄

私たちはたくさんの植物に囲まれて生活しているが、その植物について名前すら知らないことがある。植物を目にしたその場所で簡単に、植物の名前を知り、さらに詳しい内容がわかれば学ぶことができる。植物への理解が深まるばかりではなく、自然環境についての関心を高めることが期待できる。
我々は、AI技術であるディープラーニングによる画像認識を用いて、スマートフォンなどで撮影した植物の画像から植物の名前を判断し、その解説を行うシステムを開発した。スマートフォンのカメラで植物を撮影し、画像データから構築した学習モデルを用いて植物の種類を判別する。ディープラーニングの学習には多くの画像データが必要であり、本研究では約5000枚の画像を準備し、転移学習により学習モデルを構築した。実験の結果、この学習モデルは高い精度で正しく判別できることがわかった。また、スマートフォン用アプリケーション(iOS向け)のプロトタイプシステムを開発した。
今後は認識精度のさらなる向上や植物の種類を増やすことなどに取り組みたいと考えている。