建築学部建築学科・建築コース
研究室紹介
深和研究室では室内から屋外まで、滞在者の快適性を対象に幅広く研究を行っています。特に、半屋外空間における熱的快適性に着目し被験者実験や実測を進めています。具体的には、空間特性(壁、屋根の開放性)や視環境、環境に対する期待などの違いが熱的な快適範囲に与える影響に関心があります。そして、執務者の知的生産性およびウェルビーイングに関する研究も行っており、これからの社会におけるワークプレイスのあり方について検討を行っています。
以上に加え、快適性と省エネルギーを両立した環境計画や環境シミュレーションを用いた設計を通して、住宅・建築設計の実践に取り組んでいます。
主な研究紹介
半屋外空間における環境グレードが熱的快適性に与える影響
近年、地域住民の交流や簡易な事務作業を目的として都市空間やオフィスにおける半屋外空間の導入事例が増加しています。半屋外空間の導入は、冷暖房負荷の削減や滞在者のストレス回復や気分転換に寄与する可能性が示されており、半屋外空間の重要性はさらに高まると考えられます。そこで、大学キャンパス内の異なる空間特性を持つ半屋外空間5箇所にて物理環境測定、アンケート調査を行いました。SET*(体感温度)と不満足申告者率の関係を調査場所ごとに比較し、屋外側グレードの調査場所(中庭・テラス)において、室内側グレード(ピロティ・アトリウム・学生ラウンジ)と比べて滞在者の熱的快適域が拡張することが示されました。
オフィスワーカーの主観的幸福感に関する影響構造
オフィス環境の基本的品質や充実度などの要因が主観的幸福感に与える影響を明らかにするため、構造方程式モデリングを用いて分析を行い、「仕事の質」「私生活の質」「コミュニティの質」が主観的幸福感に影響を与える構造を示しました。特に、「仕事の質」が主観的幸福感を醸成する上で最も重要な要因であることを明らかにし、「仕事の質」はオフィス環境の充実度に最も大きな影響を受けることを示しました。さらに、多母集団同時分析を用いて、柔軟なワークスタイルの執務者や環境感受性が高い執務者において、「仕事の質」が主観的幸福感に与える影響が強いことがわかりました。また、多様な家具・什器の存在などのオフィスの空間特性の違いがワーク・エンゲージメントを通じ「仕事の質」評価に大きな影響を与えることも明示されました。
環境工学の知見を生かした住宅・建築設計の実践
熱的快適性や断熱性能、自然採光、通風などの環境工学の知見を活かした住宅・建築設計を実践しています。その一つに「部分断熱の家」(住宅特集2022年9月号)があります。築100年近い住宅を熱的快適性に観点から平面計画を整理し、耐震補強と高気密・高断熱化を行ったジェネリック空間と、日本家屋の格式を保存したヴォイド空間の二つに分けました。このように、既存ストックを活用し快適性と省エネルギーを両立した設計手法の検討を進めています。さらに、熱や風、光などに関する環境シミュレーションを用いて、建築のデザイン・計画とその空間で過ごす人々の快適性の関係を包括的に検証することも重要です。以上のように、建築設計の実践と教育研究の往還を続けています。
