パワーエレクトロニクス研究室 (内野 翔太) |電気情報工学科|学部・大学院|実工学教育の日本工業大学

基幹工学部電気情報工学科

※2025年4月より、電気電子通信工学科から学科名称変更予定

パワーエレクトロニクス研究室

内野 翔太 助教

教員紹介

研究室紹介

脱炭素社会の実現に向け、太陽電池などのクリーンエネルギー発電デバイスが注目されており、私たちの生活にも広く導入されています。これらのデバイスから発電されたエネルギーを活用するために、発電デバイスを電源回路に接続し、入力電力がバッテリーなどの負荷に適した電力の形に変換する必要があります。電源回路内にはスイッチが含まれており、時刻・状態に応じて回路方程式が切り替わります。このような力学系を合成力学系と呼ばれます。合成力学系では、パラメータが変化すると分岐現象と呼ばれる現象が生じ、電源回路内においてはこの現象が回路動作の不安定化を引き起こし、変換効率の低下を招く恐れがあります。内野研究室では、電源回路に生じる分岐現象の解析および不安定な回路動作を安定化する制御手法を研究し、これらの理論と手法を活用して高効率な電源回路の設計を目指しています。

主な研究紹介

クリーンエネルギー発電デバイスを接続した電源回路に生じる分岐現象の解析

クリーンエネルギー発電デバイスは種類ごとに異なる出力特性を持っています。例えば、太陽光を用いて発電する太陽光発電デバイスは、非線形の電流-電圧特性を示します。一方で、温度差を利用して発電する熱電発電モジュールは、線形の電流-電圧特性を持ちます。これらのデバイスの出力特性によって、電源回路内にみられる分岐構造や分岐現象の発生メカニズムが異なる場合があります。これらの入力電源の出力特性や回路構成が電流または電圧波形の動的挙動にどのような影響を与えるかを安定性解析手法を用いて調査します。

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合成力学系に適用可能なカオス制御手法の提案と実装

一般的に電源回路の設計では、回路動作が安定で電流または電圧リプルが小さいことが求められます。電源回路の回路パラメータの変化により分岐現象が生じると、電流や電圧リプルが増加し、回路動作が不安定になることがあります。しかし、適切な制御を施すことで、不安定な電流・電圧波形を安定化させることが可能です。また、このカオス制御手法はマイクロコンピュータを用いて実装することができ、幅広い回路パラメータに対応する電源回路の設計が可能になります。

分岐理論を活用した工学的応用

電源回路内に生じる分岐現象の解析およびカオス制御手法を活用し、高効率な電源回路の設計を行っています。分岐現象の解析は、プログラムを用いて安定性解析手法で行い、これによりリプルが小さい回路パラメータ領域を可視化することが可能です。この分析を基に、小型で低コストかつ高効率な電源回路の設計および開発を推進しています。特に、熱電発電モジュールを用いた車載用排熱発電システムの開発に取り組んでおり、走行状態による排ガスの温度変化にも対応できる電源回路の設計に取り組んでいます。