基幹工学部電気情報工学科
研究室紹介
この宇宙はどのような世界なのでしょうか。生命が住める惑星はどのくらいあるのでしょうか。膨大な数の銀河はどのように形作られ、現在の姿に進化してきたのでしょうか。本研究室は、望遠鏡によって得られる観測データを手がかりに、太陽系外惑星、銀河、ブラックホールなど宇宙の様々な天体や現象の性質を調べる観測天文学の研究を行っています。物理モデル及び統計推定に基づく観測データの解析、解析手法の構築、観測装置や計測システムの開発を通して、私たちが住む宇宙の理解を目指しています。天文学はもちろん、情報処理、統計解析、装置開発に関心のある学生さんを歓迎します。
主な研究紹介
太陽系外惑星の探査
太陽以外の恒星を公転する惑星を太陽系外惑星と言います。本研究室では、重力マイクロレンズ現象を利用した太陽系外惑星探査を行っています。重力マイクロレンズ現象とは、光源となる天体(光源星)と観測者の間を、恒星や惑星系などの重力源(レンズ天体)が横切る際、レンズ天体の重力によって光源星の光が曲げられ、光源星の明るさが時間変化して観測される現象のことです。レンズ天体が単独の恒星の場合、観測者の視線上に光源星とレンズ天体が並んだ時に最も明るく観測されます。レンズ天体が惑星系の場合、レンズ天体の主星の重力による増光に加え惑星の重力によって二次的な増光が起こります。この明るさの時間変化を捉えることで、惑星を発見し、その質量や地球からの距離を推定します。重力マイクロレンズ現象を用いた太陽系外惑星探査は、レンズ天体の明るさを利用しないため、地球から遠く離れた暗い恒星周りの惑星も発見できるという、他の惑星探査法にはない利点があります。これまで発見された太陽系外惑星の多くは太陽系から約6000光年以内の太陽系近傍に存在しますが、重力マイクロレンズ現象を利用した探査法では約2万6000光年離れた天の川銀河の中心近くに存在する惑星も発見することができます。太陽系近傍と異なる環境で惑星形成はどのように違うのか、天の川銀河にはどれだけの惑星が存在するのかといった疑問について、統計的にアプローチできる点がポイントです。

銀河の形成と進化に関する観測的研究
銀河は多数の星、星間ガス、ダストと呼ばれる固体微粒子などから構成される天体であり、宇宙の主要な構成要素です。しかしながら、銀河がどのように形成され成長したかについて、多くの未解決の謎が残されています。例えば、太陽系が属する天の川銀河は、渦状腕のある円盤状の形態をしており、現在も星形成が行われています。一方で他の銀河に目を移すと、星形成活動がほとんど行われておらず、主に古い星で構成されている楕円銀河や、円盤状や楕円体状といった明瞭な構造を持たず、渦状腕や光の集中した中心核が見られない不規則銀河など、様々な銀河が存在しています。こうした銀河の多様性が、どのような物理過程や進化の違いによって生じたのかは、現在も重要な研究課題です。本研究室では、銀河の多様性の起源を明らかにするために、銀河特性の統計調査、銀河を構成する星々の化学組成調査、変光星を用いた天の川銀河の年齢分布推定、銀河円盤に潜むブラックホール探査、銀河内を漂う自由浮遊惑星の探査など、銀河形成や銀河内天体の進化に関する観測的研究を行っています。

天文観測装置や計測システムの開発
観測天文学では、天体からの微弱な信号を捉えるために、高感度、低雑音、高空間分解能、高時間分解能を備えた観測装置が求められます。このような要求性能の中には、日常的な産業利用や社会的応用では想定されない要求も含まれます。例えば、天の川銀河の中心方向を観測すると、銀河面に沿って多数の星や星間ガス、ダストが重なって見えますが、可視光は特にダストによる吸収・散乱の影響を受けやすく、天の川銀河の奥の構造を見通すことは困難です。一方、可視光に比べて波長の長い赤外線はダストによる影響を受けにくいものの、装置自身の熱によって発生する赤外線がノイズとなり、天体からの微弱な信号の測定に影響を与えます。そのため、赤外線観測では装置の冷却や背景成分の補正が特に重要になります。また、ブラックホールの降着円盤など非常に高温の物体はX線によって観測することができますが、宇宙からのX線は大気によって吸収されてしまい、地上からは捉えることができません。したがって、X線観測装置は衛星に搭載して観測を行う必要があり、卓越した性能に加えて宇宙空間の強い放射線環境下でも安定して動作する耐性が求められます。本研究室では観測天文学における新たな知見を切り開くため、こうした要求を満たす高性能な天文観測装置と、信号処理や較正を含む計測システムの開発を行っています。
